札幌ドームに隣接する北海道農業研究センター(農業試験場)=豊平区羊ヶ丘=の敷地(国道36号線と羊ヶ通に挟まれた土地)に、札幌市がスポーツ施設を集めた「スポーツパーク」構想を進めています。

国道36号線沿いの北海道農業研究センター入口

 この土地は、地元豊平区と清田区の町内会連合会など地域住民団体からも「札幌市民のために土地を開放してほしい」との要望が近年、強まっている土地です。

北海道農業研究センター(国道36号線と羊ヶ丘通の間の区域)

 この土地は、北海道農業研究センター(北農研)を含む国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構、本部:茨城県つくば市)の敷地です。この国道36号線と羊ヶ丘通に挟まれた敷地では、稲作研究のための水田や職員住宅などがあります。

 北農研の敷地は、羊ヶ丘通を超えて南側にさらに広大な土地が広がっています。こちらでは、事務棟や研究棟、畑作や畜産の研究などの農場があります。北海道らしい牧歌的な風景が広がり、「さっぽろ羊ヶ丘展望台」もその延長線上の一角にあります。

 このうち、札幌市がスポーツパーク構想を進めているのは、国道36号線と羊ヶ丘通に挟まれた区域で、広さは60ヘクタールあるそうです。

スポーツパーク構想を伝える北海道新聞記事(2019年7月27日付)

 2030年冬季五輪招致を目指している札幌市は、札幌ドーム(冬季五輪の開閉会式を予定)に隣接するこの土地に、冬季競技強化拠点となる国の「ハイパフォーマンスセンター」誘致や札幌市のアイススケート場、ラグビー場などを建設する構想を進めています。これがスポーツパーク構想です。

 札幌市によると、ハイパフォーマンスセンターには数百人規模の宿泊施設も備わるそうです。

 アイススケート場は、現在の月寒体育館(スケート場)を移転、ラグビー場も現在の月寒屋外競技場(ラグビー場)を移転する計画です。

 豊平区と清田区の町内会連合会などが、スポーツパーク用地を含め札幌市への開放を求めているのも、この国道36号線と羊ヶ丘通に挟まれた区域です。

 昔は、「札幌の街並みは月寒の農業試験場まで」という印象があったかもしれませんが、今や、その先に人口11万5000人の清田区が開け、さらにその先には北広島市大曲の大型商業施設や工業団地などが立地し、農業試験場の場所が札幌のまちはずれという状況ではなくなっています。

 近年、清田区に隣接する北広島市大曲地区の開発は目覚ましく、北農研の研究水田がある敷地両側の国道36号線と羊ヶ丘通を通る自動車の数は急激に増加しています。

国道36号線と羊ヶ丘通に挟まれた敷地にある研究用水田

 このため、豊平区や清田区の町内会連合会会長らからは「何も、今の時代、あそこで北海道の稲作研究をする必要はないのではないのか。北海道にはもっとふさわしい場所があるだろうし、あの土地はもっとふさわしい土地利用の仕方があるはずだ」との声が上がっています。

 地元は、北海道農業研究センターが北海道農業の発展に尽くしてきた功績を高く評価しています。そのうえで、時代の流れの中で、土地利用の再考を求めているのです。

 豊平区の5町内会連合会(豊平、美園、月寒、福住、月寒東)と清田区の5町内会連合会(清田、清田中央、北野、平岡、里塚・美しが丘)、清田地区商工振興会、札幌清田ライオンズクラブの計12団体でつくる地下鉄東豊線建設促進期成会連合会(牧野晃会長)は、ここ数年、毎年札幌市長に行っている地下鉄の清田延伸の要望で、「北農研の土地を地域活性化のため活用を」と要望してきました。

北海道農業研究センター内には見事なカラマツ並木がある

 今年も7月11日に行った市長要望で「北海道農業研究センターの用地(国道36号線と羊ヶ丘通の間の土地)の利活用について、札幌市として本格的な検討を進めていただきたい」と要望しています。

 札幌市は既に、スポーツパーク構想を農研機構に非公式に伝えたといいます。

 では、農研機構側は、こうした札幌市のスポーツパーク構想や地域住民の声をどう考えているのでしょうか。「ひろまある清田」は、農研機構に質問状を出し、その回答を北農研からいただきました。次の通りです。

質問1
 札幌市が農研機構の敷地(国道36号線と羊ヶ丘通に挟まれた土地)にスポーツパークを構想しています。札幌市から打診はありましたか。それについての農研機構のお考えはいかがですか。

回答1
 札幌市が検討していることは承知していますが、具体的な話にまでは至っていないため現時点ではコメントできません。

質問2
 農研機構の当該土地は、稲作研究の水田と職員住宅があると思いますが、稲作はどのような研究をされていますか。札幌以外の場所で研究することは可能ですか。

回答2
 様々な用途向けの水稲品種や低コスト・省力的な栽培技術開発などの研究を行っています。札幌以外での研究については未検討です。

質問3
 職員住宅は何棟ありますか、何階建てですか。全部で何戸分ありますか。実際に、何世帯がいまお住みですか。移転は可能ですか。

回答3
職員住宅としては1棟(4階建て、24戸)で、18世帯が住んでいます。その他に取り壊し予定の職員住宅(無人)が9棟あります。なお、この住宅は国(農林水産省)が所有し管理していることから、住宅(建物)の移転の可否については当方からコメントできません。

質問4
 農研機構の土地(国道36号線と羊ヶ丘通に挟まれた土地)には、水田と職員住宅のほかに、どのような施設がありますか。

回答4
 園芸作物(カボチャやタマネギなど)の研究を行っている北海道農業研究センターの施設があります。他に、牛乳房炎等酪農衛生上の諸問題解決などに向けた研究を行っている動物衛生研究部門北海道研究拠点があります。

質問5
 かつて農業試験場は札幌のはずれでしたが、今は、農業試験場の外側にも札幌の住宅街は広がっています。地元では、せめて国道36号線と羊ヶ丘通に挟まれた土地は、農業試験場ではなく札幌市のまちづくりに使ってほしいという声があります。こうした声について、いかがお考えですか。

回答5
 スポーツパーク構想もそうですが、札幌市からお話があれば検討してまいります。

 北海道農業研究センターは、国道36号線と羊ヶ丘通に挟まれた土地の活用について、札幌市と検討する用意があるとの回答を示してくれました。地元としては、大いに期待したいと思います。

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