清田区は2018年9月6日の北海道胆振東部地震で、里塚地区と美しが丘地区、清田中央地区(清田団地)などで大きな宅地崩壊と建物被害が発生しました。
里塚地区で昨年(2019年)6月から札幌市の地盤改良工事が始まったのに続き、同じく被害が発生した美しが丘地区や里塚霊園緑地帯隣接地区でも、雪解け後に札幌市による地盤強化工事が始まります。

地盤改良工事が続く里塚地区=2020年1月22日
清田区の大きな宅地崩壊と建物被害は、里塚地区、美しが丘地区、霊園緑地帯隣接地区、清田中央地区の4カ所で起きましたが、清田中央地区を除いて、対策工事が出そろったことになります。
■里塚地区

里塚地区=2020年1月22日
里塚地区(里塚1条1丁目、同2丁目)は、全壊約60棟を含む500棟超の建物被害が発生しました。全壊の建物はほとんど解体され、更地になった宅地では冬の間も地盤強化の改良工事がたけなわです。
この工事は、札幌市によると、約4ヘクタールの範囲で個人所有の宅地部分に薬液を注入して液状化が起こりにくい地盤にする工事です。これは、3月中には終える予定です。
令和2年度には、地区内の道路(市道)に暗渠管を埋設し地下水を排水するシステムを構築する工事を本格的に行います。薬液注入で地下水が上がる恐れがあるため、水位を下げて液状化を起こりにくくする工事だそうです。
現在、地盤強化工事の基地として使われている里塚中央ぽぷら公園の工事は令和3年度になるとのことです。
■美しが丘地区

美しが丘の里塚循環通。この道路沿いに被害が集中。かつて三里川支流が流れ、今は道路の下に三里東排水(暗渠)が流れている=2020年1月23日
美しが丘地区(美しが丘3条6丁目、同1条7丁目、同2条7丁目)は、160棟の建物被害が発生しました。
当初、札幌市は地盤強化工事を里塚地区のみ行う方針を表明していましたが、地元の羊ヶ丘通町内会と美しが丘南公園町内会から「不公平ではないか。こちらも建物が傾いて住めなくなった被害があるのに」といった声が上がり、市も対策工事を検討するようになりました。
その結果、美しが丘地区では里塚地区のような宅地の地盤改良は行わないものの、地域内の道路に地下水を排水する暗渠管を埋設する工事を行うことにしました。地下水位を下げて液状化が起きにくいようにするそうです。
昨年12月15日に開催した地元説明会で両町内会とも、市の対策工事を了承しました。工事は今年2020年6月ごろから開始し、来年3月までに終える予定です。
■里塚霊園緑地帯隣接地区

里塚霊園(左側)と住宅地(右側)の間にある緑地帯。ここもかつては三里川支流だった。今は暗渠(三里東排水)になっている=2020年1月23日
里塚霊園緑地帯隣接地区(美しが丘5条9丁目)は、「全壊で避難が必要」6棟、「地盤沈下や家の傾き」21棟、「軽い被災」9棟の計36棟の建物被害が発生しました。
この地区は、里塚霊園緑地帯に沿った住宅街で、緑地帯は宅地より概ね3メートル低いくぼ地になっています。被災した住宅は、緑地帯のくぼ地に引っ張られるように傾きました。
この地区も南美しが丘町内会が札幌市に要望書を出すなど声を上げ、札幌市も対策工法を検討しました。
市は、「宅地と緑地帯の高低差が原因で、地震で宅地が低い緑地帯側に地滑りした。液状化が起きたわけでない」と分析。くぼ地(緑地帯)を盛り土して、宅地とくぼ地の段差をなくす工法を地元に提案しました。緑地帯は霊園敷地の一部で、市が所有・管理する土地です。
地元の南美しが丘町内会は昨年12月8日に開催された地元説明会で、この市の対策工法を了承しました。盛り土工事は今年6月に始め、11月ごろまでには終える予定です。
ただ、里塚霊園緑地帯のくぼ地は、かつて三里川支流が流れていたところで、宅地造成した昭和59年~60年(1984年~1985年)に埋め立てられ緑地帯になりました。三里川支流は埋め立てにより暗渠河川(三里東排水)になりました。
地元住民によると、このかつて三里川支流があった霊園緑地帯は、2018年9月の地震で25センチ~30センチ沈下したそうです。「ここも液状化があったのではないか。緑地帯を盛り土するだけで大丈夫か」といった意見が聞かれます。
■清田中央地区
この地区では、清田7条2丁目、同3丁目、地区の中心部を貫く清田中央通、清田真栄通沿いで建物被害や地盤のずれなどの被害が発生しました。液状化が起きたと思われます。
しかし、この地区の対策工事は決まっていません。札幌市によると、宅地造成が古く、データを集めきれていないそうです。
清田中央通、清田真栄通は地区の商店街になっていますが、かつては清田川が流れていました。今は暗渠河川になっています。
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