カナダの女流作家モンゴメリの小説「赤毛のアン」の世界を再現した芦別市のテーマパーク「カナディアンワールド」に行き、広大な園地を2時間あまり散策してきました(2024年6月2日)。

カナディアンワールド

 カナディアンワールドは破綻し、閉鎖になりかけましたが、なんと「赤毛のアン」のファンの人たちが施設を芦別市から引き継いで自主運営し、土曜日曜だけ開園しています。

アンの家(グリーンゲイブルズ)

園内の遊歩道

 園内は、やはり寂れてはいましたが、「赤毛のアン」の愛読者の一人として、散策しながら「赤毛のアン」の世界と風景を少し感じることができました。

 札幌から車で滝川まで高速に乗り、芦別市のカナディアンワールドには2時間半ほどで到着しました。芦別の市街から5㎞ほど山の中に入ったところにあります。

 入園は無料です。日曜日なのに駐車場には車が6、7台しか駐車しておらず、あまり人が来ていない雰囲気です。

園内に入ると、まずこの光景が目の前に広がる

リンド夫人の家

 園内に入ると、広々とした草原のような風景が広がり、遊歩道が真っすぐ伸びています。正面にセントジョン時計台という塔が建っています。カナダの昔の美しい町にあったクロックタワーをモデルにしたそうです。

ポストオフィス

 時計台を過ぎると、やがて左手に郵便局舎と、おせっかいだけど親切な「リンド夫人の家」がありました。

ポストオフィス内部

 郵便局はカナダのプリンス・エドワード島国立公園に実在するポストオフィスをモデルに再現したもので、ボランティアの人が関連グッズなどを販売していました。

 ここで聞いた話によると、各建物は担当のボランティアがいて、テナント(グッズ販売、軽食喫茶等)として管理運営しているそうです。土曜日曜に開園と言っても、ボランティアなので、建物は必ずしも開いているとは限らないとのことです。

アンの家

 ここから横の道を入って行ったところに、「アンの家」(グリーンゲイブルズ)があります。カナダのプリンス・エドワード島国立公園にあるグリーンゲイブルズをモデルに、建物や室内の造作を忠実に再現しています。

アンの部屋

 「アンの家」は手入れが行き届いており、外壁も真っ白く塗られており、とてもきれいです。中に入ると、アンの部屋、マリラの部屋、キッチン、ダイニングルームなどがあり、アンの時代の生活道具や洋服なども部屋の中に展示されています。

 今にもアンやマリラ、マシュウが現れてきそうな雰囲気です。「赤毛のアン」のファンなら、このグリーンゲイブルズは感動ものです。

アンの家のキッチン

ダイニングルーム

ダイアナの家(手前)とアンの家(奥)

 アンの家から樹林の中を奥に歩いて行くと、アンの腹心の友「ダイアナの家」がありました。残念ながら、この日はボランティアの人が来ていなかったので、鍵がかかっていて中には入れませんでした。

森の道を歩いて行く

 「ダイアナの家」からちょっとした森の中を歩いて傾斜を登って行く道がありました。「赤毛のアン」の世界をちょっぴり彷彿させてくれる森です。

アンが通った学校(手前)とアンの教会(奥)

 森の坂道を登り切った所に、アンがダイアナと通った学校オーウェルスクールがあります。中も拝見でき、ドラマで見たままの教室内の光景が再現されています。ここでアンはギルバートから赤い髪をからかわれ、石板でギルバートの頭をたたいてしまったのですね。

学校の内部

 この学校の近くの高台に「アンの教会」が建っています。残念ながら、この日はボランティアの方が来ていなかったので中は拝見できませんでしたが、ステンドグラスが美しいそうです。

アンの教会

 教会の前には、ここで結婚式を挙げたカップルの手形がたくさん並べてありました。今も結婚式ができるそうです。今年7月には、この教会で「語りと音楽の集い」というイベントが開催されるそうです。

 さて、ここから高台を降りて池のほとりにある街並みゾーンまで歩いて行きました。かつては、各建物でグッズや飲食の店だったのかもしれませんが、この日は2、3の建物を除いて鍵が閉まっていました。

街並みゾーン

 空いている店舗は、案内所と簡単なグッズ販売の店で、カフェはありませんでした。廃線になったレールがもの悲しい感じです。かつてはカナディアン・ロッキー号というミニ列車が園内を走っていたそうです。

 園内は遊歩道が整備されており、草原や森などにもアンの世界を感じながら、建物を見て回りました。緩やかな傾斜もあり、結構な運動量の散策になりました。

園内は遊歩道が整備されている

 カナディアンワールドは1990年、石炭の露天掘り跡地を活用して、芦別市と東急エージェンシーなどによる第3セクター「星の降る里芦別」が52億円かけて開発、開園しました。

 しかし、来園者数は翌1991年の27万人をピークに減少し、1997年に破綻。1999年から芦別市の市営公園として再出発しました。

 ところが、年数が経つうちに園内の建物などが老朽化し、維持費がかかることなどから芦別市は2019年秋をもって閉鎖を決定。

 これに対して、園内の建物に物販や飲食などのテナントとして入っていた市民ら十数名が「美しい風景を残したい」と、カナディアンワールド振興会を結成、芦別市から土地と施設を無償で借り受け、2020年から運営を開始し、今日に至っています。

きれいに手入れされている「アンの家」の外壁。有志の方たちの意気込みが感じられます

 実際、今回、カナディアンワールドに行って、市民有志のボランティアの方にお話を聴いて、はじめて「カナディアンワールド」のその後と現在を知ることができました。

 運営資金は、クラウドファンディングや寄付金で賄っているそうですが、大変なことだと思います。破綻し、行政もあきらめたカナディアンワールド。それを市民有志の手で運営を続けている、すごい取り組みだと感じました。

 カナディアンワールドを支援する「友の会」があります。また寄付金も募っています。詳しくは、カナディアンワールド・ホームページをご覧ください。

 「赤毛のアン」は、ルーシー・モンゴメリ(1874~1942)が1908年に発表した作品。おしゃべりで空想好きな少女が素敵な女性に成長していく様を描いた世界的な名作。

 この作品の日本語翻訳者である村岡花子の半生をモデルにしたNHK朝ドラ「花子とアン」が2014年に放送されました。主演は吉高由里子さんでした。

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