札幌市の新型コロナウイルス新規感染者数が246人と過去最多となった5月2日(日)、札幌市内で5月5日(水祝)に実施される五輪マラソンテスト大会への疑問の声がネット上にあふれました。

 感染者数が過去最多となり、多くの市民が不安を感じている中での五輪マラソンテスト大会の実施。ネットには「こんな状況なのに愚かだ」「あまりに非常識」「外出自粛と言っておきながらテストマラソンは止めない。言っていることとやっていることが矛盾している」「緊急事態宣言もまん延防止措置も出さないのは、この大会があるためでは」「市民の命はマラソン大会以下か」といった声が噴出しています。

 五輪マラソンテスト大会の正式名は「北海道・札幌マラソンフェスティバル2021」と言います。8月のオリンピック本番のコースを使い、大通公園、駅前通り、すすきの、中島公園横、平岸通り、創成川通り、宮の森・北24条通り、北海道大学構内などを走り、ゴールに達します。ハーフマラソンと10キロマラソンを行います。

 出場する選手数は、報道などによると、ハーフが男女100名ほどの模様です。日本の五輪代表選手4名も出場するということです。また、海外選手もオランダやドイツなど4か国6選手が出場するそうです。10キロには実業団選手50人ほどが出場するようです。

 当初予定していた市民ランナー2500人のレースは中止し、大会実行委員会は沿道での応援自粛を呼びかけています。

 この大会を主催する大会実行委員会の構成メンバーは、次の通りです。

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会、北海道、札幌市、北海道陸上競技協会、札幌陸上競技協会、北海道商工会議所連合会、札幌商工会議所、北海道スポーツ協会、札幌市スポーツ協会、北海道新聞社

会見する秋元札幌市長=札幌市広報部公式チャンネルより

 主催者でもある秋元札幌市長は5月2日、記者会見で記者から感染が過去最大に拡大した中で行う五輪マラソンテスト大会について問われ、「本番に向けた運営テストとして必要最小限のものを行う。ご理解ご協力をお願いしたい」と述べ、予定通り開催することを明らかにしました。

 さらに、記者から「沿道でのマラソン観戦を控えるように市長は言っているが、沿道に来てしまう人はいる。外出自粛や札幌市への往来自粛を言っている一方で、テスト大会は開催すると言う。その整合性はどう取るのか」と問われ、秋元市長は「イベントは開催時期を変更できるものは、変更するようお願いしていく。しかし、時期を変更できないものも多々ある。それらはマラソンだけでなく、強制的に中止するという法体系はない」と答えました。

 秋元市長は感染が拡大した札幌の状況について、同じ記者会見で「札幌は緊急事態宣言レベルの大変危機的な状況になっている。とりわけ医療体制はまさに非常事態の状況にある」との認識を示したうえで、「人との接触を極力抑えるよう市民にお願いします」と話しました。

 札幌の感染状況は「緊急事態宣言レベル」だけど、五輪テストマラソン大会は「時期が変更できない」から実施するということのようです。

 思うに、秋元市長としても(おそらく鈴木北海道知事も)、内心「こんな状況では大会をやりたくない」と思っているのではないでしょうか。しかし、①政府や五輪組織委、東京都が五輪中止を決めてない以上、準備のテスト大会はやらざるを得ない②あまりに大会が迫っているので、この土壇場で中止したら大混乱になる―そう考えているのかもしれません。いろんな事情があって、はっきりとは言えないのでしょう。

 でも、市民は納得するでしょうか。この事態は、もう五輪の混乱が始まっているということでしょう。

 毎日新聞は「市民マラソンは中止なのに、五輪テストマラソン開催に疑問の声」と報じました。朝日新聞も「札幌の五輪マラソンテスト、なぜ強行? 市民は冷ややか」という記事を出しました。

 大会実行委員会のホームページを見てみましたが、市民の不安や疑問にこたえるような情報はありません。既に中止が決まった市民ランナー向けのQ&Aなどが延々と掲載されたままになっています。

 170名規模の内外出場選手に加えてコーチ、スタッフらを含めると何人規模の大会になるのでしょうか。その人たちの移動手段はどうするのでしょうか。検査はどのくらいの頻度で、どう行うのでしょうか。「札幌の医療は非常事態」と市長も言うほどです。テスト大会による札幌の医療機関へのさらなる負荷はないのでしょうか。開催するというなら、それくらいの情報は公開してほしいものです。

 札幌の感染者数が過去最多になった5月2日、大会実行委員会から何もコメントはありませんでした。

※(追記)北海道テレビ放送(HTB)は大会前日の5月4日夕、独自の調査で五輪マラソンテスト大会の反対が79%に上ると放送しました。

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