札幌市が、新月寒体育館(通年型アイスリンクとアリーナで構成)の建設場所を当初予定していた北海道農業研究センターの国有地(国道36号線と羊ケ丘通に挟まれたエリア)ではなく、札幌ドームの駐車場に建設する方向で検討しているというニュースが新聞、テレビで流れています。

札幌ドームとその駐車場
違和感いっぱいです。日本ハムが撤退し、経営が厳しい札幌ドームの駐車場をつぶしてしまっていいのでしょうか。駐車台数がかなり減少し、ますます客足が遠のくことになりませんか。
これでは札幌市自ら「そんなにドームに来なくていいよ」と言っているようなものじゃないですか。

札幌ドームの駐車場をつぶして建設=北海道新聞より
しかも、狭い敷地に札幌ドームと新月寒体育館が窮屈そうに建つ姿は、北海道らしい雄大さからほど遠い光景になるのではないでしょうか。
札幌市が北海道農業研究センターの国有地を取得して進めようとしているスポーツ交流拠点(スポーツパーク)の中核施設は、新月寒体育館でした。少なくとも、そう受け取れる説明を札幌市はしてきました。それをドーム駐車場に造ってしまったら、札幌市のスポーツ交流拠点の中心施設が抜け落ちてしまいます。
札幌市はなぜこんな愚かで異様なことをしようとしているのでしょうか。それは、北海道農業研究センターの土地を所有する国(農林水産省)が、札幌市に土地を譲ってくれないからです。
北海道新聞によると、札幌市は国側から「五輪招致が売却の前提」「五輪という国家プロジェクトが来なければ、土地を譲らない」と言われたといいます。

月寒体育館
新月寒体育館は老朽化した現在の月寒体育館(豊平区月寒東1条8丁目)を建て替え、2030年冬季五輪が招致されたらアイスホッケー会場にする予定でした。五輪がらみの施設という側面があったのは事実です。
しかし、1971年に建設された現在の月寒体育館は老朽化のため、もともと建て替える計画でした。五輪招致は失敗に終わりましたが、五輪招致にかかわらず建て替えを計画していた施設です。

北海道農業研究センターの国有地(赤色部分)が候補地だった。札幌ドーム駐車場は予定になかった=北海道新聞2019年7月27日より
札幌市は、新月寒体育館だけでなく、現月寒体育館に隣接する月寒屋外競技場(ラグビー場、弓道場、テニスコート)なども一括して北海道農業研究センターの国有地(国道36号と羊ケ丘通に挟まれたエリア)に移転させ、さらに国の冬季競技強化施設「ハイパフォーマンスセンター」誘致や人が交流できる施設などを整備するスポーツ交流拠点構想(スポーツパーク構想)を打ち出してきました。
札幌市は、この構想を進めるのに必要な用地として、国に農業研究センターの土地の払い下げを求めてきたのです。また、地元の町内会連合会会長からも「農業研究センターでまちが分断されている。国は払い下げを」との声が出ています。
まちづくりのために地元が求めているのに、「五輪が前提」という国の説明はおかしいと思います。「農業研究のために、あの土地は必要」と言うのなら納得できますが、「五輪が来ないなら譲渡しない」という説明は納得できません。

北海道農業研究センターにある水田
札幌市がスポーツ交流拠点として整備しようとしている北海道農業研究センターの国有地には現在、大きな水田があり、稲作の研究が行われています。今どき、大都市札幌の街なかで稲作を研究する時代でしょうか。もっと、あの土地は有効な土地活用があるはずです。農業研究センター構内には職員住宅も建っていますが、ほとんど職員は住んでいないといいます。
札幌市は、もう少し時間をかけて国側と農業研究センターの土地交渉をすればいいのに、なぜ、急いで新月寒体育館を建てるのでしょうか。それはプロバスケットボールチームのレバンガ北海道のためです。
北海道新聞によると、レバンガ北海道がプロバスケットボールBリーグの新トップカテゴリー参入条件(①5000人以上の収容②VIPルームを備える)を備えたホームアリーナを2028年秋までに持たないと、レバンガは参入できなくなる恐れがあるというのです。

道立北海きたえーる
現在のホームアリーナの道立「北海きたえーる」(豊平区豊平5条11丁目)は、収容人数は満たしているものの、VIPルームがありません。
報道によると、レバンガや道にはお金がなくVIPルームを造る改装ができないので、札幌市が市民の税金400億円をかけて、わざわざ札幌ドームの駐車場を潰してVIPルーム付きの新月寒体育館を急いで建設するというのです。おかしくないですか。
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