2026年の札幌冬季オリンピック誘致を進めている札幌市は、豊平区の札幌ドーム隣接地に計画していた選手村(4500人収容)を南区真駒内に変更する案を12月8日の市議会に示しました。

地下鉄東豊線建設促進期成会の説明会

 これに対し、清田区と豊平区の町内会連合会10団体と清田地区商工振興会、札幌清田ライオンズクラブの計12団体で構成する地下鉄東豊線建設促進期成会連合会(牧野晃会長)は「寝耳に水だ。これまでの話と違う」と強く反発。12月21日(木)、清田まちづくりセンターに札幌市の担当者を呼び、説明を求めました。

 札幌市は2016年11月にJOCに提出した開催計画では、選手村の建設地は「豊平区羊ケ丘の札幌ドーム隣接地」と明記、広さは「28・5ヘクタール」としていました。

 そして、大会後は「宿泊施設や体育施設等の施設の一部を有効活用し宿泊機能や屋内体育施設による障がい者スポーツのトレーニング施設も含めたスポーツパークを検討します」としていました。

 また、秋元札幌市長は、これまでの新聞インタビューや地下鉄期成会などに対して「札幌ドーム周辺地に選手村やメディアセンターを設置し、その上で地下鉄東豊線延伸の採算性を検討したい」旨の発言をしてきました。

 こうした動きに、地下鉄期成会や関係地区の町内会連合会、地域住民は「選手村等のオリンピック施設設置は地域の活性化と地下鉄延伸につながる」と期待が高まっていたのです。

 しかし、12月8日に札幌市が市議会に示した案では、選手村について「真駒内地区に選手村を整備する」とびっくり仰天の変更になっていたのです。清田区のある町連会長は「ちゃぶ台をひっくり返された思いだ」と憤慨しています。

 市の変更理由は「経費削減」で、市の変更案では「将来的なまちのリニュアルと連動して推進し施設整備費の縮減を図る」としています。

 さらに地下鉄福住駅近くの月寒グリーンドーム跡地に計画していたメディアセンターも、白石区東札幌の「札幌コンベンションセンターを活用」と、市はこれも変更したのです。

説明する札幌市スポーツ局の里課長(左端)

 12月21日の説明会には、期成会側から各町内会連合会長らと事務局員が出席、札幌市側はスポーツ局招致推進部調整課の里忠克課長と福島敦担当係長が出席しました。説明会は、清田区町内会連合会連絡協議会の臨時会議を兼ねて行いました。

 冒頭、期成会の牧野会長(清田地区町内会連合会会長)は「みんなよそへ持って行ってしまったら、我々の地域の方面には何もない。これまでの市長の説明を変更することになり、地下鉄延伸にもマイナスになる」として、札幌市の担当者に説明を求めました。

 里課長は「選手村を真駒内に造ったとしても、ドーム隣接地に大会後、スポーツパークとして施設整備する計画はなんら変更ありません」と説明しました。

 確かに、新たな市の変更案にも「オリンピックレガシーの象徴空間として、札幌ドーム周辺にスポーツパークを整備」と記されています。

 しかし、町連会長らから「スポーツパークの具体的な内容、計画を示してもらわないと納得できない」との声が出ました。里課長は「今、検討しており、2018年3月までに計画をつくります」と述べました。

 では、真駒内地区の選手村計画とは具体的にどんなものなのでしょうか。期成会側からの質問に対し里課長は「地下鉄真駒内駅前の警察官舎と賃貸住宅(UR都市機構団地)の地区を想定、解体して建設します」と説明。真駒内の方が「新たに水道などのインフラを造る必要がない」ことを経費節減の理由としました。

 しかし、期成会側から「ドーム隣接地と真駒内の場合、それぞれ建設費はいくらと試算したのか」と問うと、里課長は「札幌ドーム隣接地に造る費用は610億円ですが、真駒内に造る場合の建設費は試算していない」と述べました。

 片方を試算していないのに「真駒内の方が経費節減できる」とどうして言えるのでしょうか。どうもよく分かりません。

 また、賃貸住宅には現在、約2000人以上の住民が暮らしているそうですが、「まだ住民には説明していない」ということです。この人たちは、どうなるのでしょうか。この日の説明ではよく分かりませんでした。

 里課長からは「全部の選手村が真駒内にできるかどうか未定です。真駒内に2000人、札幌ドーム隣に2000人になるかもしれない」という発言もありました。

 メディアセンターについては、「全部コンベンションセンターに移すわけではありません。新聞系はコンベンションセンター、放送系は月寒グリーンドーム跡地にと2つに分けるようにします」と里課長は説明しました。

 なお、冬季オリンピックの開閉会式はこれまでの計画通り、札幌ドームで行うということです。

 札幌市によると、オリンピックの3大重要施設は、開閉会式場、選手村、メディアセンターの3つだそうです。開閉会式場は、すでに立派な札幌ドームがあります。新設は選手村とメディアセンターです。

 従来の秋元市長の説明や札幌市の計画では、重要施設の選手村もメディアセンターも札幌ドーム周辺地区に設置するとなっていました。今回、札幌市が市議会に示した案は、これを大きく変更するものです。

 今後のまちづくりにも大きく影響する変更だけに、清田区の町連会長からは「簡単に従来の計画を変更して、札幌市のまちづくりの基本はどうなっているのか」と疑問視する声が出ました。

 説明会では、町連会長から「なんとか地下鉄延伸につながるような計画にしてほしい」との切実な要望が里課長に伝えられました。

 最後に、牧野会長から里課長に「ドーム周辺に選手村やメディアセンターを設置し、地下鉄東豊線延伸の採算性を検討したいとういう就任当初の市長公約の内容を、今一度再認識再検討していただきたいと、秋元市長にお伝えいただきたい」と申し入れました。

 札幌冬季オリンピック開催概要計画は2018年3月までに策定、公表する予定だそうです。

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