国土地理院は地震後の9月12日、「札幌市清田区の地形復元図」を作成、公開しました。それによると、今回の清田区の液状化や地盤沈下、家屋の傾きなどの地震被害の多くが、かつて谷だった地形のところで発生していたことが改めて浮かび上がってきます。

清田区地形復元図①(里塚1条1丁目~3丁目付近)(国土地理院)青い部分が、かつての「谷底平野」。緑は「山地・斜面」、茶色は「台地」、薄い紫色は「台地(低位段丘面)」、青い点線は「谷線」

 「札幌市清田区の地形復元図」は、国土地理院が1961年(昭和36年)と1966年(昭和41年)に撮影した空中写真を判読し、今の地図に落としたものです。

清田区地形復元図②(清田区のほぼ全体を表示)平岡と北野の高台地区はおおむね茶色の「台地」。平岡公園東と里塚緑が丘は概ね「台地」(茶色)と「山地・斜面」(緑色)

 清田区の多くの地域は、昭和50年代以降に宅地開発され、川筋や谷筋を埋めて平たんな土地にしたため、開発以前の地形がどうだったのか、どこに谷が走っていたのか、今では分からなくなっています。

 国土地理院の「清田区地形復元図」は、それを明らかにしたものです。

清田区地形復元図③(里塚・美しが丘・真栄地区)厚別川沿いの幅広の青い部分は「氾濫平野」。河川が運んだ土砂で形成された平たん地。

 復元図の中で、青色の部分が「氾濫平野」または「谷底平野」です。里塚地域では青色の部分は「谷底平野」で、周辺の緑色の部分の「山地・斜面」を川が削ってできた谷底の土地です。

 地形復元図①をご覧ください。この青色の「谷底平野」は、旧道(旧国道36号、地図で湾曲している道路)付近で上流方向に向かって4つの谷底に分かれます。4つの「谷底平野」はいずれもかつては三里川およびその支流があった所と思われます。

 一番左の「谷底平野」にまとわりつくように薄い紫色の部分があります。これは周囲より階段状に高くなった平たんな地形です。ひょっとしたら田んぼだったのかもしれません。

 この4つの流れのうち、左から2本目の流れを除く3本は、この地域が宅地開発された際に暗渠(あんきょ=地下水路)化されました。一番左が「三里川」、1本飛んで「三里東排水」「里塚西排水」という暗渠です。

暗渠化された三里川(札幌市作成の河川管理地図)

大きく傾いた住宅

 今回の地震で、大きな被害が発生した里塚1条1丁目の里塚中央ぽぷら公園周辺は、一番左の「谷底平野」(暗渠「三里川」)に沿って帯状に地盤の陥没、沈下、地割れ、家の傾きが起きたと思われます。

 左から2番目の「谷底平野」もかつて川が流れていたと思われますが、札幌市河川管理課作成の地図では、ここは暗渠になっていません。暗渠になっていなければ、かつての水の流れはどこへ行ってしまったのでしょうか。気になります。

美しが丘小学校グラウンドに地割れ

 今回の地震で、ブックオフ美しが丘店駐車場と美しが丘小学校グラウンドで地割れが発生。美しが丘小学校グラウンド横の道路では液状化や沈下も起きました。これは、清田区地形復元図では、里塚1条1丁目地域の「谷底平野」の延長だったところです。

液状化が起きた美しが丘3条6丁目

 一方、美しが丘3条6丁目の住宅街でも液状化、家の傾きの被害が出ました。近くの美しが丘南公園も液状化しました。国道36号線沿いの札幌トヨペット里塚店横の土地が大きく陥没し、車1台が転落しました。これらはいずれも、暗渠「三里東排水」が地下を流れる筋で発生しました。つまり、かつての「谷底平野」です。

土地が陥没、車が転落=里塚の国道36号線脇

 清田区地形復元図で、茶色の部分は「台地」(段丘面)です。青い点線は、「谷底平野」の延長線上にある「谷線」です。平岡と北野の高台は「台地」が広がっています。

清田区地形復元図④(清田中央地区)山地(緑色)に幾筋もの谷(青い色)が走っていたことが分かる。この地域も地面の亀裂や建物の傾きなどの被害が出た。

 清田中央地区(清田団地)は、里塚・美しが丘と同じく「山地・斜面」が多く、その中を幾筋もの「谷底平野」と「谷線」が走っています。この地区でも地割れ、家の傾きなどの被害が出ました。

 国土地理院は「札幌市清田区の地形復元図」をホームページで公開しています。ダウンロードもできます。

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