札幌市は10月18日(木)、地震で大きな被害が出た清田区里塚地区の第2回住民説明会を清田区体育館で開催しました。道路と宅地が大きく沈下したところは、道路だけでなく個人所有の宅地のかさ上げも札幌市が行うなどの復旧基本方針を示しました。

 里塚地域の住民説明会は9月13日に続いて2回目。今回は秋元克広札幌市長も初めて出席しました。説明会には約300人の住民が参加しました。

 この中で、札幌市は被害が大きかった里塚1条1丁目、2丁目の復旧基本方針を示しました。

 それによると、復旧についての基本的な考えは次の通りです。

1 住宅・宅地の補修・再建については、各種支援金や貸付金を活用し、個々に進めてもらう。ただし、道路と宅地が大きく沈下しているところについては、道路と宅地を一体的に復旧する必要がある。

2 この道路と宅地を一体的に復旧する範囲では、宅地のかさ上げを道路の復旧に併せて札幌市が行う。

3 大規模な土砂流出を再度起こさないための対策を行う。

説明する秋元札幌市長

 通常、個人所有の宅地を行政が公費で整備することはありませんが、今回は、道路と宅地に段差ができてしまうので、こうした道路と宅地の一体的な復旧工事を行政として行うそうです。

 この一体的な復旧工事には、住民合意を得て住宅を解体撤去し更地にする必要があるそうです。対象は、里塚1条1丁目の里塚中央ぽぷら公園周辺の5、60戸程度とみられます。

 道路と宅地を一体的に復旧する地域以外では、住宅・宅地の所有者が支援制度を活用して自分で補修・再建を進めることになるとのことです。

 ただし、宅地の沈下などで家が傾いた人には、最大200万円の補助金を札幌市は出す準備をしています。この支援を受けて、具体的には家のジャッキアップ、地盤改良、陥没復旧、擁壁の復旧などの対策を行ってもらうとのことです。

 「宅地のかさ上げを市費で行う」「最大200万円の住宅・宅地補修補助金」の2つが、今回、札幌市が示した独自の施策です。

 一方、再度の大規模土砂流出を防止する対策は、沈下、陥没、家の傾きが大きかった地域で実施することが発表されました。具体的には次の3つの工法が住民に示されました。具体的にどの方法にするかは、今後、住民と協議しながら合意の上で実施するそうです。着工は早くても来春で、2020年末の完了を目指します。

1 地下水位低下工法

地下水位低下工法のイメージ

 地下水位(地表面から地下水までの深さ)を下げることで、液状化による被害を軽減させる工法。道路などの公共区域内で工事するので個人負担は発生しない。ただし、建物やライフラインが沈下する恐れがあるそうです。熊本市や茨城県潮来市などで実施。

2 格子状地中壁工法

格子状地中壁工法のイメージ①

 道路と宅地の境界、宅地と宅地の境界部分に、セメント系固化剤を混合させて格子状に壁を造り、地盤の変形を抑えることで液状化被害を軽減する工法。道路だけでなく宅地内にも施工が及ぶ。1宅地あたりの個人負担は約200万円。区域内全員の合意が必要。千葉県浦安市で実施。

格子状地中壁工法のイメージ②

3 滑動崩落防止工事

 傾斜地における盛り土の地滑り的な変動を、抑止杭や擁壁、地下水排除などにより防止する工法。様々な工法の組み合わせが考えられる。費用負担は、選択する工法によりさまざま。仙台市(擁壁など)、熊本県益城町(擁壁など)、新潟県柏崎市(地下水排除)で実施。

滑動崩落防止工法のイメージ

 前回9月13日の第1回説明会は、札幌市側の準備が整わず具体的な回答がほとんどなかったため、何度も紛糾する場面がありましたが、今回は大きな混乱はありませんでした。しかし、「宅地に向かないところを、なぜ市は開発許可したのか」など納得のいかない住民もいたようです。

 札幌市は次回3回目の説明会を11月中旬以降、4回目を12月中旬以降に開催する予定です。

※工法のイメージは、住民説明会資料、国道交通省HPなどによる。

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