札幌市は、雪解け後の来年(2019年)4月から、地震で液状化による大量の土砂流出が発生し、住宅が大きく傾くなどの被害が起きた清田区里塚1条1丁目地区の地盤強化工事を行います。約3ヘクタールに及ぶ住宅地の地盤を人工的に強化するかなり大がかりな工事で、12月19日の第4回地元説明会で札幌市が地域住民に提示しました。
札幌市は、同地区の被害発生要因として、地下水が集まりやすい「集水地形」だったうえ、火山灰の盛り土による緩い地層だったことから「液状化」が発生したと分析。さらに、高低差のある地形だったため、昔の沢に沿った形で帯状に大量の土が低い方に「流動化」して地表に流失、地中が空洞化して多くの住宅が傾く被害が発生したと分析しました。
こうした分析をもとに、対策工事は液状化を抑制し、流動化が起きないようにすることを目的に実施します。工事対象範囲は、里塚1条1丁目を中心とする約3ヘクタール。宅地、道路、公園に分けて工事を行います。対象戸数は約100戸で、市は2019年3月までに住民同意を取り付けたい意向です。総事業費は約40億円で、個人所有の宅地も公費で工事を行います。
宅地は、「薬液注入工法」と呼ばれる工事を行います。土の粘着力を高める薬液を宅地の地中に流し込む工事で、住宅が建っていても斜め横からの注入が可能だそうです。液状化と流動化を抑制する効果があるとされています。
道路は、「深層混合処理工法」という工事を行います。道路下の地下水が流れる盛り土層に、セメント系固化材と土を混合させた円柱形の柱を大量に埋め込み、壁を造ります。この壁により、「地盤の横方向の揺れを抑えることで液状化を抑制し、流動化を防止する」としています。
公園(里塚中央ぽぷら公園)は、「砕石置換工法」という工事を行います。公園の土を砕石に置き換える工事です。これにより液状化を抑制し、流動化を防止するとしています。また、砕石は透水性に優れているため、砕石層に暗渠管を配置し、地下水を集めて三里川ボックス(三里川暗渠)に流す仕組みを造り、地下水が地中にたまることを防ぐとしています。
この地区は、「造成前の沢に沿った集水地形」(札幌市資料)が問題でした。札幌市は、この地下水を排水処理する工事も行うとしています。
札幌市は地下水位観測の結果、里塚1条1丁目地区では、宅地造成前の旧地形(沢地形)に沿って、国道36号線の上流側から地下水が流入し集まっていると分析。この流入を抑制するために国道36号線から1本里塚側に入った中通りの道路の土を透水性の高い砕石に置き換え、地中に暗渠管を設置し、地下水を三里川ボックス(三里川暗渠)に流す仕掛けを造るといいます。この道路下で、地区に流入する地下水をまずはブロックしようという作戦です。
それでも下流方向に流れてくる地下水は、里塚中央ポプラ公園の置換した砕石と暗渠管で排水するという考え方です。
また、宅地や道路の地盤改良により、地下水が食い止められ地区の地下水位が上がる可能性があります。これを防ぐために、工事対象区域内の道路下には地下水を排水する暗渠管を配置するとしています。
全体として、地下水が集まらないようにする対策をした地盤強化工事と言えます。
以上の工事により、札幌市は「再度の大規模な土砂の流失(流動化)の防止が図られる」としています。ただし、札幌市は「一定の効果は期待できるが、宅地の変状を完全に防げるものではない。住宅・宅地の耐震化等の安全確保は必要に応じて所有者が実施してほしい」とも呼び掛けています。
工事のスケジュールは、宅地が2019年度に実施。道路は2019年度~2020年度に実施。公園は2020年度に実施するとしています。地下水を排除する工事は2019年~2020度に実施します。札幌市は、2020年度末にはすべての対策工事を終えたいとしています。
今回の地震で液状化は清田区内の他の地域でも見られたほか、清田区以外でも発生が確認されています。しかし、地中の土の大規模な流動化は、この里塚1条1丁目地域だけで起きた現象と札幌市は言います。
今回の大規模な地盤強化工事は、この「流動化」被害が発生した地域に限って行う予定です。
いずれにしろ、全国的にもあまり例のない大がかりな住宅地の地盤強化工事です。札幌市の技術職員と施工業者たちの英知を集めた工事になりそうです。
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