恵庭市の市街地に茂漁川河川緑地(恵庭市幸町)という河畔林と小川のせせらぎからなる素晴らしい緑地があります。バイカモという白い花が、清流の水面に可憐に咲いていました(2021年7月16日)。

木陰の中、せせらぎの音を聞きながら散歩道を歩く=2021年7月16日

せせらぎ水路(水と緑の回廊ゾーン)

 恵庭市内を車で走っていて、たまたまこの緑地を見つけました。絵のような美しい風景に惹かれ、緑地の駐車場を見つけて車を降りました。

 ここは「茂漁川河川緑地」というようで、現地の案内板によると、「さいわい公園」と「せせらぎ水路(水と緑の回廊ゾーン)」から成り立っているようです。

 「水と緑の回廊ゾーン」の中を歩いてみました。せせらぎの水の透明度の高さに驚きです。涼しげな音を立てて流れていきます。その横を遊歩道が続いています。

バイカモの花が水面に群生

 清流の水面に咲くバイカモ(梅花藻)は、多年草の水草で、冷涼で流れのある清流に生育するそうです。恵庭では7月~8月にウメの花のような白い花を咲かせます。

清流の水面に咲くバイカモの花

 バイカモは、環境省から絶滅危惧種に指定され、北海道からも希少種に指定されている植物です。

 清流の中で、近所の子供たちが網を持って小さな川魚と川エビを捕っていました。

さいわい公園

 「さいわい公園」の中も小川は流れています。樹木に覆われているため、まるで森の中の散策のようです。オオウバユリが遊歩道の脇に咲いていました。

オオウバユリ

 住宅街の中に、このような緑と水のオープンスペースがあることに驚きです。

 この河川緑地のすぐ横を、漁川の支流である茂漁川が直線的に流れています。この茂漁川沿いにも遊歩道が付いています。

茂漁川沿いにも遊歩道が続く

茂漁川の清流にもバイカモが咲いていて、カモの群れもいました。

茂漁川のカモ

 この「絵になる風景」茂漁川河川緑地はどのような経緯でできたのでしょうか。ちょっと調べてみました。そこには、恵庭市役所の職員たちと地域住民による「茂漁川を生かした川づくり、まちづくり」への熱心な取り組みがあったようです。

 茂漁川は明治時代から農業用水として活用されてきましたが、昭和30年代になって農地を洪水から守るために河川を直線化し、護岸をコンクリートで固めました。その後、周辺は急速に宅地化が進みました。

 緑地内を流れる清流は、直線化される前の茂漁川だったようです。この旧河道には水が流れなくなっていましたが、河畔林は残っていました。

河畔林の遊歩道の途中にある東屋

 恵庭市は1987年(昭和62年)策定の「水と緑のやすらぎプラン」で、旧河道と河畔林を生かすまちづくりを目指したのです。1990年(平成2年)、「ふるさとの川モデル事業」に認定されました。

 旧河道に水を引き、河畔林を取り込み、生活に溶け込んだ豊かな自然を創出しました。旧河道がせせらぎとなって甦ったのです。

 茂漁川の護岸は、できるだけ緑化護岸とし、防護柵は設けないことにしました。こうして、1997年(平成9年)に一連の整備は完成したそうです。

 2007年(平成19年)には、「土木学会デザイン賞」優秀賞に選ばれています。

 今も、地元の自治会等によるごみ拾いや落ち葉集めなどが行われ、地元の人たちによってこの環境は守られているそうです。

 恵庭市は、花のまちづくりで知られていますが、この茂漁川河川緑地を見ても、住環境の向上に取り組んだ恵庭市役所職員たちの熱意と底力を感じます。

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