札幌市が清田区でおかしなことをやっています。

 札幌市は「地域交流拠点清田の拠点機能向上に向けた官民連携によるまちづくり」を清田区で進めようとしています。ここでいう官民連携とは「札幌市とイオン平岡店との連携」のことです。

「地域交流拠点清田」に指定されている清田地区

 この市の計画は、札幌市がイオン平岡店の増築・増床を許可して、その賑わいを清田区役所や西友清田店などがある「地域交流拠点清田」地区に及ぼそうというものです。

 しかし、イオン平岡店と清田地区は歩くと概ね2.4㎞も離れていて、普通の人が歩いて行き来する距離ではありません。

 2.4㎞という数値は、実際にイオン平岡店と西友清田店の距離を、人が歩く道路(北野通)に沿って実測した数字です。とても両地区が一体感のある地域とは思えません。

 距離の離れたイオン平岡店を「地域交流拠点清田」に入れてしまえば、イオン平岡店の増床・増築が可能になる―という市のやり方は、あまりに強引で乱暴です。

 ところが、札幌市はこれを強行する腹で、この10月からイオン平岡店の増床を認める都市計画の変更(用途地域の変更)手続きに着手しました。

■地域交流拠点とは

 そもそも地域交流拠点とは何でしょうか。

清田区役所

 札幌市によると、地域交流拠点とは「地域の豊かな生活を支える中心的な役割を担う拠点」とされています。公共施設や商業施設、病院、金融機関、飲食店などが立地し、地下鉄またはJRの駅がある地域の中核地区です。

 市は、地域交流拠点として市内17か所を指定し、交流拠点を中心に各地域のまちづくりを進めています。

 17か所の拠点は、清田、新さっぽろ、大谷地、福住、月寒、白石、平岸、澄川、真駒内、光星、栄町、北34条、麻生・新琴似、篠路、琴似、宮の沢、手稲です。

 この17か所のうち、清田、新さっぽろ、真駒内、篠路の4つは「先行的に取り組みを進める拠点」と市は位置付けています。

 ところが、清田だけは拠点づくりが一向に進んでいません。

 理由は明らかです。清田だけが地下鉄がなく、従ってバスセンターもなく、人が集まる形が出来ていないからです。他の地域交流拠点は、「地下鉄+バスセンター」がセットになって交通結節点を形成しています。だから、人々が集まり交流が生まれているのです。

 地域交流拠点清田を形成するには本来、他の拠点と同様に地下鉄駅を設置し、バスセンターを併設して交通結節点をつくることが最も求められることです。

■イオン平岡店との連携という無理筋な話

 地域交流拠点清田について、札幌市の計画は「イオン平岡店の増床・増築を許可して、イオン平岡店に集まる人流を清田地区に波及させて地域交流拠点清田の賑わいと交流を創り出す」というものです。2020年10月に突如として公表されました。

 正式名は「地域交流拠点清田の拠点機能向上に向けた官民連携によるまちづくり」と言います。

イオン平岡店

 しかし、イオン平岡店の増床・増築がどうして2.4㎞も離れた清田地区の地域交流拠点の形成促進になるのか、全く理解できません。大いに疑問です。

 歩いて行き来できる距離ではないため、札幌市は、イオン平岡店と清田地区を「交通利便性の向上」つまりバスで結ぶといいます。

 でも、考えてみてください。イオン平岡店に行った客が、どうして用もないのに、わざわざバスに乗って清田地区まで行くでしょうか。賑わいを波及させるなんてことができないことは、目に見えています。

 札幌市の資料によると、イオン平岡店地区と清田地区の「地域連動」のイメージとして、「新たなにぎわい・交流の創出」「都市機能の充実」「交流人口の増加」「魅力的な空間の創出」など抽象的な美辞麗句が並べられていますが、まったく具体像が浮かんできません。

札幌市が公表した「イオン平岡店と清田地区の連動」イメージ図。「平岡3条5丁目地区」とはイオン平岡店のこと。麗々しい言葉が並んでいますが、これでどうして清田地区の拠点形成が進むのか、さっぱり分かりません

 札幌市の担当者に「どうしてイオン平岡店の増床が清田地区の賑わいになるのか」と聞いても、上記のような抽象的な説明しか返ってきません。まったく説得力がありません。

 札幌市は、イオン平岡店の増床・増築を許可するのは、清田地区のためと言っているのですが、どうして清田地区のためになるのか、市民が納得できる説明が全くできないのです。それなのに、強引に事を運ぼうとしています。

■イオン平岡店の増床・増築計画

 イオン平岡店の増床・増築計画は、どんなものなのでしょうか。

 イオン平岡店を経営するイオン北海道は、増床・増築の規模や、どんな店舗を計画しているのかなど、いまだ正式な発表はありません。

 ただ、これまでに漏れ伝わってきたところによると、イオン平岡店とイオンの森(樹林地)の間にある駐車場に、新たに大きな店舗建物を増築し、物販飲食のほか、人が集まったり、イベントができるホールなどを造る計画です。

イオンの森

 また、現在立ち入り禁止の「イオンの森」の一部に広場を造り、森の中には散策路も造る計画のようです。広場の周りに飲食店舗を並べる計画もあるかもしれません。

 ただし、イオンの森の北側半分は、毎年、春から夏にかけて渡り鳥のアオサギが飛来し、営巣地(コロニー)になっているため、手は付けないようです。

 ホールとイオンの森とは、道路をまたぐ空中回廊でつなぐ計画だそうです。

 現在のイオン平岡店の床面積は、札幌市によると、8万5000平方メートルほどあるそうです。これをさらに数万平方メートル増床・増築する計画のようです。

■現状では増床できないイオン平岡店=用途地域という壁

 しかし、イオン平岡店がある土地は、都市計画上の「用途地域」の縛りがあり、増床したくてもまったく増床できないのが現状です。ここが重要なポイントです。

 用途地域とは、「機能的な都市活動と良好な都市環境の保護を目的に、住居や商業、工業などの都市機能を適切に配分するため、土地利用上の区分を行うもの」(札幌市ホームページより)です。札幌市は12の用途地域を指定しています。

 イオン平岡店が建っている土地は、「第2種中高層住居専用地域」という用途地域に指定されています。これは「主に中高層住宅の良好な環境を守るための地域で、1500㎡を超える店舗、事務所、工場等は建てられません」という地域指定で、店舗の増床には制限がかかっています。

 このため、イオン平岡店は現状では増床・増築できないのです。イオン平岡店は数万平方メートルの増床・増築を検討していると言われていますが、用途地域の規制で、現状では増床はできません。

■「イオン平岡店も地域交流拠点清田」という屁理屈

 そこで、札幌市はイオン平岡が増床・増築できるように用途地域を「近隣商業地域」に変更し、増床の規制を潜り抜けようと考えました。

 「近隣商業地域」とは、「主に、近隣住民の日用品販売店舗などの業務の利便増進を図る地域で、風俗施設、一定規模以上の工場等は建てられません」という地域です。「近隣商業地域」には店舗面積の上限の規制はありません。いくらでも増床できます。

 用途地域「第2種中高層住居専用地域」を一気に「近隣商業地域」にランクアップすることは簡単ではありません。それなりの理由が必要になります。

 そこで、札幌市が考えたのが「イオン平岡店と清田地区の連携」という「理由」です。この理由が、理由になっていないことは前述したとおりです。

 札幌市が言う「理由」は、世間では一般に「屁理屈」あるいは「詭弁」といいます。

 札幌市が、用途地域などの指定の基本的な考え方をまとめた「地域地区指定標準」(2019年改訂)によると、地域交流拠点は原則、用途地域を「近隣商業地域」に指定すると書かれているのです。

 札幌市は、この基準を使って、「イオン平岡のある地区も、地域交流拠点清田の範囲内」と強弁し、イオン平岡店の増床・増築の制限をくぐり抜けさせようとしているのです。

 これが、札幌市の「地域交流拠点清田の拠点機能向上に向けた官民連携によるまちづくり」の本質です。

 そもそも「第2種中高層住居専用地域」から「近隣商業区域」の間には、「第1種住居地域」、「第2種住居地域」、「準住居地域」の3つもの用途地域があります。今回のように「一気に4ランクも用途地域をアップさせるのは極めて異例」と、都市計画の関係者から疑問の声が出ているのです。

■札幌市は2007年、イオン平岡の増床を不許可にしていた

 イオン北海道は2007年、イオン平岡店の増床申請を札幌市に出しましたが、市は「都市計画の中で、これ以上の商業施設の集客環境をつくるのは好ましくない。他の既存商業施設にも影響が出る」として、これを不許可にしました。

 当時も用途地域の制限があったため、イオンは建築基準法の例外規定適用を申請したのですが、札幌市は「用途地域の指定目的にそぐわない」として却下したのです。

 当時の上田文雄市長は記者会見で、イオン平岡店の増床を許可しなかったことについて、次のように語っていました(2007年10月10日)。

「イオンの増床問題につきましては、過日、建築許可の申請がございまして、それについて不許可という決定を出させていただきました。

その理由は多岐にわたりますけども、一番大きな部分は、都市計画の中でこれ以上の当該地域に集積といいますか、商業施設の集積、すなわち集客、人の流れと言いますか、あそこは車で行くことが前提になります。

車の駐車場等が非常に多くなるわけでありますので、そういう環境をあそこにつくるのは好ましくないというのが、札幌市の長期的な都市計画の中で、そのような考えを持っているというのが一番大きな理由だというふうにお考えいただきたいと思います」

 今度の札幌市の姿勢は、これとは真逆の180度異なる対応です。

 どうして真逆の対応をするのか、市は丁寧な説明をする必要があります。しかし、市は、これについて何も説明していません。極めて不透明です。

 札幌市がなぜこうまでして、従来とは真逆の対応までして、イオンに便宜を図るのか、不可解です。

■地域交流拠点清田なのに、西友清田店は蚊帳の外

 地域交流拠点清田は、国道36号線と厚別滝野公園通の交差点を中心とした地域です。西友清田店があり、清田区役所があり、北海道銀行清田支店、北洋銀行清田区役所前支店、清田病院、あしりべつ病院、きのとや、和食レストラン「とんでん」などがある地域です。

 中でも地域のど真ん中にあるのは西友清田店です。西友清田店は昭和57年(1982年)に開業、地域住民に親しまれてきました。ところが、札幌市の計画では、なぜか西友清田店との連携はありません。おかしな話です。

 西友清田店の責任者に、地域交流拠点清田のことについて尋ねたことがありますが、「何ですか、それは」という返事でした。

春から秋に何度か清田区役所前で開催された軽トラ市。すぐ向かいには西友清田店がある

 清田地区が地域交流拠点を目指すなら、そのど真ん中にある大型商業施設との連携・協力は不可欠ではないでしょうか。西友清田店を外して、どうして清田地区の賑わいをつくるというのでしょうか。

 西友のホームページを見ると、トップページに社長のメッセージが掲載されています。そこには、「地域社会とともに」という言葉が掲げられ、「様々なパートナーの皆様とともに、地域社会に寄り添い、貢献し、誠実で信頼される存在として持続可能な社会の発展を目指します」とあります。

 西友は「地域社会の寄り添い、貢献」すると言っているのですから、地域交流拠点清田の形成には、西友清田店と協力して一緒に取り組む姿勢が必要なのではないでしょうか。

 地域の真ん中にある大型商業施設を外して、距離の離れた大型商業施設とわざわざ連携する交流拠点づくりって、一体何なのでしょうか。

 このようなことから、市が言う「地域交流拠点清田の官民連携のまちづくり」というのは、結局、イオン平岡の増床・増築のためなの方便なのか、という疑念がぬぐい切れません。

■地域交流拠点清田の形成が遠のき、清田地区が寂れていく

 地域の中には「人の流れがイオン平岡に行ってしまい、地域交流拠点清田の実現がさらに遠のいていく感じがする」と心配する声が結構多くあります。

 清田地区にとっては深刻な問題です。

 そして、この問題について、ほとんどの清田区民、住民が、何も知らされないまま事が進められているのは本当に問題だと思います。

 札幌市はもっと広く清田区民に丁寧に分かりやすく説明し、区民と議論すべきでしょう。

 地域交流拠点の話なのに、札幌市が住民説明会を行うのは平岡地区会館だけです。(11月4日19時から)。清田地区でも開催すべきではないですか。

 用途地域変更の話は10月26日(水)、清田区内の町内会連合会会長や副会長らを区役所に集めて、市は一応の説明をしました。

 この時、市が配布した資料は、土地計画や用途地域の素人にはまったく分からないような書き方で、誠意が感じられません。現に、参加した人に聞いて見ましたが、「用途地域のことはさっぱりわからなかった」と言っています。

 ただ、「イオン平岡店の増床がどうして清田地区の賑わいにつながるのか、さっぱりわからない」という指摘が町連会長からも出て、「市の担当者から納得できる説明はなかった」とのことです。

 イオン平岡の増築・増床計画はどのようなものなのか。これについてイオン北海道にも取材を申し入れましたが、「何も決まっていないので、お話することはありません」という返答でした。

 イオン平岡店は住宅街の中にあります。その増床に伴う周辺道路の交通環境変化などもさっぱり明らかにされていません。

 増床・増築の姿を隠したまま、まちづくりの根幹にかかわる用途地域の変更だけが進んでいく異様な事態です。

 それなのに、札幌市は次のスケジュールで、区民にきちんとした説明もないまま、どんどんと話を進めようとしています。

〇11月4日(金)19時 平岡地区会館で住民説明会
〇11月18日(金) 札幌市都市計画審議会
〇2023年1月上旬から2週間 都市計画法に基づく「案」の縦覧
〇2023年1月下旬 札幌市都市計画審議会
〇2023年2月下旬 告示

こんなことでいいのでしょうか。

[広告]