道は1月23日(月)、野幌森林公園内にある北海道百年記念塔(札幌市厚別区)の解体工事を始めました。誠に残念な事態です。私たちの清田区内にも百年記念塔を校歌に歌いこんでいる小中学校が3校あります。百年記念塔の解体は、子供たちの心を打ち壊す暴挙に感じます。
北海道百年記念塔は昭和43年(1968年)、北海道百年にちなみ着工し、昭和45年(1970年)に完成しました。高さは100m。北海道を切り開いた先人たちの苦労を偲び、感謝し、そして今を生きる私たちが、先人たちの志を受け継ぎ、未来に向かって郷土北海道をさらに良くしていこうという誓いを込めた塔であると思います。
その北海道百年記念塔は、北野小学校、清田南小学校、真栄中学校の校歌に使われています。
■北野小学校校歌
はるかに望む 開拓の
記念の塔に 日は昇る
澄みわたる 空の光よ
ここに築こう 郷土を
■清田南小学校校歌
朝霞にけむる 石狩野
はるかに 百年記念の塔
清田のあゆみ そのままに
父祖の労苦を しのび立つ
開拓の心 永遠に継ぎ
清田南に 学び行く
■真栄中学校校歌
あしりべつ流れる大地の
原始林 望む彼方に
百年の歴史は栄えて
塔はるか夢をかたるよ
創造の心ゆたかに
おおいなる世界学ばむ
開校以来、児童生徒たちは、この校歌を歌い続けてきました。百年記念塔がなくなったら、児童生徒たちは、どんな思いで校歌を歌うのでしょうか。
ちなみに、百年記念塔を校歌に歌いこんでいる学校は16校もあります。次の16校です。
厚別東小学校、厚別北小学校、東川下小学校、厚別通小学校、共栄小学校、北野小学校、清田南小学校、しらかば台小学校、ひばりが丘小学校、文京台小学校、厚別北中学校、もみじ台中学校、真栄中学校、大麻東中学校、大麻中学校、大麻高校
道が、百年記念塔の解体を決めたのは2018年でした。理由は、老朽化して危険というものでした。維持するには30億円かかるというものでした。しかし、もともと100年耐久設計で建設されたものです。道内の建築の専門家からも「問題はない」との指摘があります。なぜ、拙速に解体してしまうのか、不思議でなりません。
そもそも、道が北海道百年記念塔を解体することを、多くの道民は知りませんでした。昨年、道内の住民86人が解体差し止めを求める行政訴訟を札幌地裁に起こし、さらに解体反対の市民グループの活動が活発化するに及んで、ようやく少しずつ、この暴挙が道民、札幌市民に知られるようになってきました。
知られるようになったら、道はそそくさと解体を始めてしまいました。道民や札幌市民に丁寧な説明もなくです。
百年記念塔は、同化政策を強いられたアイヌ民族への敬意を欠くとの批判がありました。これについて、百年記念塔を設計した井口健さん(札幌市中央区)によると、元々の設計案には、塔の根元に隣接して石積みのモニュメントを配置し、壁面にはアイヌ文様を施すことになっていたといいます。予算の関係で、それは道に断られたといいます。
井口さんは、「アイヌ民族など先人を慰霊するモニュメントも設置するはずだった。モニュメントには、アイヌと和人、全ての先人への慰霊と感謝を込めた。それが記念塔のそばにあることで初めて完成たり得た」と話しています(北海道新聞2019年5月10日)。
こうした話を聴くにつけ、解体する前にもっとやることはあるのではないかと残念に思えてなりません。
50年ちょっとで、北海道の歴史が詰まった記念塔をポイ捨て。先人たちの筆舌に尽くし難い苦労と歴史がポイ捨てされる感じです。モノを大切に長く使う心もありません。
維持するには30億円かかる、というのも解体理由とされています。浅薄なコスパ優先主義のようで、情けないですね。歴史的文化的価値は金額には現れません。その価値は、30億円以上あるかもしれません。
解体工事が始まった1月23日(月)、北海道百年記念塔に行ってきました。雪原にそびえ立つ記念塔の足元で2台の重機がガシャガシャと大きな音を立てて、何かを破壊しているようでした。その音は、記念塔の「助けてぇー」という悲鳴のようでした。
また、この日、記念塔の存続を求める市民グループ50名ほどが、鈴木北海道知事に解体中止を求めるよう要請書を提出しました。
道は2024年5月末までに、全て解体撤去するとしています。なんとか解体工事を即時中止して、今一度、百年記念塔は本当に解体しなければならないのか、広く道民との議論をやってほしいものです。
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