8月28日(水)の北海道新聞「読者の声」欄に、「公共交通に採算性なぜ必要」という投書が掲載されました。地下鉄東豊線を清田区まで延伸してほしいと願う多くの清田区民にとって「全くその通り」と拍手を送りたい投書です。
投書の主は、札幌市白石区の男性。地下鉄延伸を求める住民要望に対し、「採算性の確保が困難」という理由で延伸に消極的な札幌市の姿勢を批判。
そして、「環境に優しいとされる公共交通を充実させる施策が世界的に多く採られている中で、環境保護に対し後ろ向きだと言わざるを得ない」。
さらに、「そもそも公共交通に採算性を求めるのが間違いではないか。住民が交通機関を利用してどこにでも行けるようにする『交通権の保証』こそ、国や自治体の仕事だと思う」と記しています。
まったくその通りだと思います。
清田区と豊平区の町内会連合会などでつくる地下鉄東豊線建設促進期成会連合会は毎年、札幌市長に地下鉄清田延伸を要望してきました。その中で、「公営交通の地下鉄は採算性だけで判断すべきではない。住民の足を守るのは行政の責務である」と主張してきました。
清田方面への地下鉄建設は昭和54年(1979年)、札幌市の地下鉄50キロ構想から始まっています。南北線、東西線、東豊線で総延長50キロを建設するという構想です。この中に、清田方面まで東豊線を建設する計画が盛られたのです。
札幌市はこの構想に基づき地下鉄建設を進めましたが、いまだ実現できていないのが福住―清田間です。他の区間は全て建設済みで運行されており、福住―清田間だけが積み残しになっているのです。
当時、札幌市は人口増加する受け皿の一つとして、今の清田区エリアを選び、住宅地として開発する施策を展開。農地や市街化調整区域をどんどん市街化区域に変更し、宅地開発を進めました。
多くの住宅が建つことになることから、その住民の足として、地下鉄東豊線の清田方面への建設が計画されたのです。清田区内の駅の位置と駅名まで市は発表しました(昭和60年=1985年)。
札幌市は、板垣市長、桂市長の時は「地下鉄清田延伸」の方針でしたが、2003年に就任した上田市長になってから延伸を凍結、「採算性から困難」と言い出しました。
これに対し、地下鉄東豊線建設促進期成会連合会は毎年、市長に延伸を要望。その中で「公営交通なのだから採算性だけで判断するのはおかしい。住民の足の確保、地域のまちづくりの核としても必要。採算性だけでなく、総合的な判断をしてほしい」と求めてきました。
現に、公営地下鉄を運行する横浜市、名古屋市、京都市、福岡市など全国の政令市では、累積赤字を抱えながらも地下鉄を建設、運行しています。「住民の足」確保するのは行政の責務という判断だからでしょう。
上田市長の後を引き継いだ秋元市長は最初の頃は、上田市長と同様に「採算性」のみで「困難」としてきましたが、近年は「採算性以外にも様々な点を加味して総合的に判断する」との姿勢になってきています。
少なくとも、地下鉄東豊線建設促進期成会連合会とのやり取りでは、そのように受け取れる発言をしてきています。
いまだに地下鉄もJRもないのは札幌10区で清田区だけです。
札幌市は市内17か所を「地域交流拠点」と定めて、そこを中心に市内各地域のまちづくりを進めています。17か所の「地域交流拠点」で、地下鉄あるいはJRの駅がないのは「清田」(清田区役所周辺地域)だけです。
駅がないためバスターミナルもなく、清田区内のバス路線は中核がないため、極めて不便な路線網になっています。
地下鉄がないために、清田区のまちづくりがなかなか進まない現実に清田区民は何年も直面しているのが実態です。
秋元市長は近年、地下鉄清田延伸について「私も地域の皆さんと同じ思い」と発言するようになりました。さらに、採算性だけでなく「総合的に判断する」とも言っております。いろいろ難しい問題はあろうかと思いますが、ぜひ、清田延伸の道筋をつける英断を期待します。
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