三浦綾子さん(1922年-1999年)のベストセラー小説「氷点」の舞台となった旭川市の外国樹種見本林(旭川市神楽7条8丁目)を散策してきました(2025年11月8日)。

外国樹種見本林のストローブマツ林と三浦綾子記念文学館(右奥)=2025年11月8日

入口の看板

 外国樹種見本林はJR旭川駅から南西に1.3㎞、石狩川の支流の美瑛川のほとりにあります。旭川駅から歩いても行ける距離です。面積は15ヘクタールあり、かなり広い国有林です。

見本林内は散歩道が整備されている

 明治31年(1898年)、外国の樹種が北海道で育つかどうか観察するために開設され、現在はストローブマツ(アメリカ北部、カナダ南東部)やヨーロッパトウヒ(ドイツトウヒ、ヨーロッパ全域)、ヨーロッパカラマツ(ヨーロッパ中部)など52種、約6000本の樹木があるそうです。

 見本林入口の所に三浦綾子記念文学館があり、三浦綾子さんの作品や遺品、資料が数多く展示されており、今も全国からたくさんの三浦綾子ファンが訪れています。

 三浦綾子記念文学館を見学した後、見本林内を散策しました。見本林内は、散歩道が付いていて、所々に案内板もあります。

 見本林の入り口付近(三浦綾子記念文学館付近)は、背の高い見事なストローブマツの林になっていて、「氷点」の舞台に入り込んだような感じがしました。

 「氷点」は冒頭、外国樹種見本林の描写から始まります。

「 風は全くない。東の空に入道雲が、高く陽に輝いて、つくりつけたように動かない。ストローブ松の林の影が、くっきりと地に濃く短かかった。その影が生あるもののように、くろぐろと不気味に息づいて見える。
 旭川市郊外、神楽町のこの松林のすぐ傍らに、和、洋館から成る辻口病院長邸が、ひっそりと建っていた。」

見本林の案内板

 散歩道を歩いてみました。落ち葉を踏みしめながらの森の散策。森の中はとても静かで、市街地近くなのに神秘的な雰囲気がします。

 樹木には、名前と原産地を書いた親切な案内板が付いているので、木の名前が分かり楽しく散策できます。

 ヨーロッパトウヒ(ドイツトウヒ)は、欧米でクリスマスツリーに利用される樹木です。ドイツトウヒも「氷点」の中に出てきますね。

 ヨーロッパカラマツなども、日本のカラマツとはちょっと違った形をしていて、見本林の中を歩いていると、ヨーロッパの森ってこんな雰囲気なのかなと思ったりします。

堤防の内側(左)も外側(右)も見本林が広がっている

 散歩道を歩いていると、やがて堤防に出ます。堤防を越えたところも見本林が続いています。思った以上に広い森です。散歩道を歩いて行くと、やがて美瑛川のほとり近くに出ました。

目の前をエゾリスが飛び出してきた。奥の建物は三浦綾子記念文学館の分館(カフェ)

 自然豊かな外国樹種見本林には、エゾリスや野鳥たちなど様々な野生生物が生息していて、実際、散歩しているとエゾリスに出会ったり、珍しい野鳥を見かけたりしました。

野鳥とも出合いました

 散歩道の途中、オオウバユリの実がなっていました。7月頃、オオウバユリの凛とした花が森の中に咲くのでしょう。春にはエゾエンゴサクやカタクリなどの花も咲くそうで、次は春か初夏に再訪したいと思いました。

オオウバユリの実

 見本林内を歩くこと、約1時間。再び、三浦綾子記念文学館に戻ってきました。この記念文学館は1998年、ファンの募金によって建てられたそうです。隣に分館があり、そこには三浦綾子さんの書斎が再現されており、また、カフェもあります。

 森の散策を終え、カフェで一休みしました。カフェの大きな窓から見えるストローブマツの林もとても素敵でした。

 三浦綾子記念文学館と外国樹種見本林は、一体として北海道遺産に選定されています。

 三浦綾子さんは昭和39年(1964年)、朝日新聞の懸賞小説に「氷点」で入選、作家活動に入りました。「塩狩峠」「泥流地帯」など数々の感動作品を発表した北海道を代表する作家で、今も広く読み継がれています。

 三浦綾子記念文学館と外国樹種見本林、おすすめです。なお、見本林入口に30台分の駐車場があります。

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