清田区美しが丘3条6丁目の住宅街は、9月6日の地震で液状化が発生し、20戸の家が傾く被害を出しました。この地区は2003年(平成15年)の十勝沖地震でも18戸の家が傾く被害を出しました。2度にわたる被害に、住民は札幌市にきちんとした対応と支援を求めています。

家の傾き被害を出した美しが丘3条6丁目
羊ヶ丘通町内会の聞き取り調査によると、今回の地震で家が傾いたのは20戸。町内会長の丹野勝さんは「傾いた家で生活して体調を崩し、病院通いの人もいます」と言います。

電柱が地中に沈下
地区内の電柱の中には、地表から1・5m付近に巻き付けてある黒と黄色のトラ模様(ゼブラ模様)の電柱標識版が、ほぼ地中に埋まってしまったものもあります。電柱が地中に沈下したものと思われます。

今も液状化の跡が残る=10月22日
近くの美しが丘南公園(清田区美しが丘2条7丁目)も液状化の被害が発生し、今も立ち入り禁止のままです。
また、付近の道路は地震後、不自然に波打ったようなところが多く、住民の不安は消えません。

波打つ道路
この付近は、2003年9月26日未明の十勝沖地震でも液状化と家の傾きという今回と同じような被害を出しています。この時の札幌の震度は4でした。
なぜ、同じところで2度も地震による液状化、家の傾きが起きるのでしょうか。
前回の地震後、札幌市はボーリング調査を実施し、「もともと沢地で、住宅開発などのため数度にわたり盛り土をしたが、その強度が弱かったことが液状化につながった」と結論付けました(北海道新聞2003年12月12日)。
そして市は「今回の地震と同規模の地震が起きた場合、液状化が発生した場所では、再び同じ現象が起きる可能性がある」としていたのです(同)。
そしてまさに、今回、再び発生したのです。
丹野さんは2003年の時も、町内会長として被害を受けた方たちの救済のために市との調整などで東奔西走しました。しかし、「2003年12月に調査結果の住民説明会があった後、市からの対応はなくなり、ほとんどの方は個人個人で家の傾きを直すなど対応していました」と丹野さんは言います。
住民は2度も液状化と家の傾きという被害を受けて「もう黙っていない」と言います。「宅地は民有地ではあるけれど、宅地として許可を出したのは札幌市。市は行政の責任として何らかの手立てをしてほしい」と願っています。
こうした思いもあって10月13日には、町内会の要望による市の説明会が羊ヶ丘通町内会館で行われました。131人の住民が参加しました。町内会側から液状化の実態を探るボーリング調査の実施を要請、市も調査を行う方針を示しました。同町内会は1510世帯が加入し、うち約250戸で一部損壊などの被害が出ているそうです。

里塚霊園から旧道の三里川まで伸びている三里東排水。これにそって液状化、地盤沈下などの被害が発生した。美しが丘3条6丁目もほぼこのライン上にある=札幌市河川網図(札幌市作成)
昔から住んでいる人によると、美しが丘3条6丁目の被害地区付近は、「大きな沢があって、沢では川の生き物などを採って遊んだ」そうです。この川は三里川の支流の一つで、宅地造成された際に埋められ、「三里東排水」と呼ばれる暗渠(地下河川)になっています。
札幌市によると、三里東排水は、里塚霊園をから旧道付近まで伸びている地下水路で、高さ1・75m、幅1・5mのコンクリート製のボックス型水路だそうです。

三里川東排水がある所は、かつて(宅地造成前)三里川の支流が流れる沢地だったことが分かる国土地理院の「清田区地形復元図」。水色は谷底平野、その先の青い点線は山地を侵食した凹地(里塚霊園まで伸びている)。緑色は山地
三里東排水は、大きな被害を出した里塚1条1丁目地区とは別の三里川支流の系統です。今回の地震では、三里東排水に沿って液状化や家の傾き、地盤変動、陥没、道路沈下などの被害が発生しています。美しが丘3条6丁目地区の被害もこの線上にあります。きちんとした原因究明と対策を住民は求めています。
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