札幌市は11月15日(木)、清田区里塚地区の市街地復興に向けた地元説明会を清田区体育館で開きました。この中で札幌市は、液状化による大量の土砂流失、地盤陥没、家の傾きなど甚大な被害が発生した里塚1条1丁目地区について、再度の被害発生を防ぐために①薬剤注入による地盤改良②地下水位低下―の2通りの工法で地盤強化するプランを住民側に示しました。

札幌市が示した地盤改良のイメージ。「改良体」とあるのは、薬剤注入で粘着力の増した土が丸く固まったもの

 薬剤注入による地盤改良は、シリカゲルや水ガラスなどの粘性の薬剤を土中に注入する工法で、土中の水分がゲル状の薬液に置き換わり、土の粘着力が増し、地震時などに地層の流動化や液状化の発生を抑えるというものです。

 この工法は、斜めや横からの施工ができるため、家屋の下の地盤改良もできるそうです。

 空港や港湾の耐震化ですでに実施されている工法で、道内では新千歳空港や石狩湾新港などで実例があるそうです。ただし、液状化が起きた地域で行うのは里塚が全国で初めてとのことです。

第3回里塚住民説明会=11月15日、清田区体育館

 一方で、この地盤改良は、土の粘着力が高まるため地下水の流れをせき止めて地下水位を上げてしまう副作用が起きるかもしれないとのことです。

 地下水位が高い(地表面に近い)と、地震発生時に液状化が起きやすいと言われています。実際、今回の里塚の被害地区は地下水位が高かったとされています。

 このため、札幌市は地下水位低下工法という工事を実施、現在の里塚地区の地下水位(約2~3m)から1~2m程度下げることにより、液状化被害の発生を抑制するとしています。

 札幌市里塚地区市街地復旧推進室によると、この工法は、地下に配水管を設置し、地下水を排水管に集め流すことで地下水位を下げるとしています。ただ、具体的にどこにどう地下水排水管を設置し、地下水をどう集めるかなどはこれから検討するそうで、具体的な詳細は次回4回目の地元説明会(12月中旬)で住民側に提示するそうです。

 これらの工事は札幌市が公費で行いますが、「対策内容によっては住民の費用負担が必要となる」(住民説明会資料)そうです。

 なお、地下水位低下工法は、熊本市(熊本地震)や茨城県潮来市(東日本大震災)などで既に実施されているそうです。

 これらの対策を行う範囲は、甚大な被害が出た里塚1条1丁目を中心としたおよそ4ヘクタールに及ぶ範囲の盛り土部分だそうです。

地盤改良を行う範囲(緑色部分)

 地盤改良のスケジュールとしては、2019年3月末までに住民合意を得て、2019年度に工事を行い、2020年3月末までに完了する計画を提示しました。

 しかし、これらの地盤改良対策は本当に効果があるのでしょうか。今回のような被害はもう起きないのでしょうか。

 市の回答は「再度の発生は防ぎたい。しかし、液状化や地盤沈下、土砂流出などが一切ないとは断定できません。それらが起きる可能性はあります」というものでした。

 ちょっと不安が残る回答です。

 これらの地盤改良策は、10月3日と11月1日に札幌市が専門家を集めて行った技術検討会議の議論を踏まえて、札幌市が練り上げたものです。

 技術検討会議は、国土交通省国土技術政策総合研究所、国立研究開発法人土木研究所・つくば中央研究所、寒地土木研究所の専門家ほか、石川達也北大大学院教授、渡部要一北大大学院教授、山下聡北見工大教授の学識経験者で構成したそうです。

 第3回住民説明会には、札幌市から吉岡亨副市長はじめ市と清田区の関係職員が出席し、住民は約240人が参加しました。

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