北海道胆振東部地震で大きな被害が発生した清田区里塚地区と美しが丘地区の昔の川(沢)の位置がほぼ分かってきました。札幌市河川管理課が宅地造成で埋め立てする前の旧河川図ともいうべき資料を作成、公表しました。
これは11月15日に清田区体育館で行った里塚地区住民説明会で配布しました。
清田区里塚と美しが丘の液状化や地盤沈下、家の傾きなどの地震被害は、かつて三里川が流れていた付近で発生したと見られています。
しかし、宅地造成した際に川(沢)は盛り土して埋め立てられ、暗渠(地下水路)や下水管になってしまい、かつての川がどこをどう流れていたか、今ではよく分からなくなっていました。特に、三里川上流の美しが丘地区の旧河川の流れははっきりしませんでした。
国土地理院作成の「清田区地形復元図」や、宅地造成前の札幌市旧地形図などで類推はできましたが、札幌市が今回初めて旧河川の流れを明確にする努力をしたため、かつての川がどこをどう流れていたのか、少なくても里塚と美しが丘地区だけはかなりはっきりしてきました。
札幌市は、「三里川」暗渠と「三里東排水」暗渠の2つの暗渠河川沿いの宅地造成前の川の流れを、当時の開発許可申請書や航空写真、国土地理院の「清田区地形復元図」などで推定したといいます。
まず、今回もっとも甚大な被害が発生した里塚1条1丁目を流れる三里川暗渠(札幌市は「三里川ボックス」と呼んでいます)とその上流部分を見てみましょう。
三里川は現在、旧道沿いの中華料理店「大華飯店」(里塚2条2丁目)横から下流が地表面に出ていますが、旧道から上流は国道36号までが暗渠(高さ1.75m、横1.5mの四角いボックス型の管)、国道から上流は下水管(直径1.5mの丸型)になっています。このためかつての川がどこをどう流れていたのか、地域住民もよく分かりませんでした。
札幌市河川管理課作成の資料によると、昔の三里川(旧水路)は旧道から国道36号線までは暗渠になっており、この区域で液状化が発生、大きな被害が出ました。
暗渠は国道36号線手前までですが、かつての三里川はその上流の美しが丘地区にも伸びていました。今回、それがかなり判明しました。
三里川は、国道36号線を越えて、美しが丘小学校グラウンド(美しが丘2条5丁目)を斜めに横切り、さらには2つの支流に分かれて、一つは美しが丘のマンション群の一部にかかり、さらに羊ヶ丘通を越えて公営住宅美しが丘団地(美しが丘4条6丁目)手前まで伸びていました。もう一つは、同じく羊ヶ丘通を越えて美しが丘西公園の横付近の住宅地(美しが丘4条5丁目)まで伸びていたことが今回、分かりました。
札幌市の旧河川図では、国道36号線から上流は「旧水路」(旧河川図の青い線)と表現していますが、これは「川」または「雨が降ると川になる沢」だそうです。ただし、札幌市は「(旧水路の)位置は多少異なる場合がある」としています。多少の誤差はあるかもしれないというわけです。
液状化等の被害は、旧道から国道36号線までの三里川暗渠沿いと、国道36号線を越えた旧水路上の美しが丘小学校グラウンド(長い大きな地割れが発生)、その先の住宅街(美しが丘3条5丁目)の道路(液状化の痕跡あり)などで発生しました。
美しが丘小グラウンドは地震で大きな地割れと長い亀裂が生じましたが、今回、札幌市が公表した旧河川図によって、同小学校グラウンドの亀裂は旧水路(昔の川)にぴったり一致した形で発生したことが分かりました。
次に、三里東排水について見てみましょう。
三里東排水は旧道の「桂台団地」バス停付近から里塚公園まで伸びている暗渠です。旧道から市営住宅里塚団地(里塚1条4丁目)の下を通って国道36号線までは四角いボックス型の管(縦1.5m、横1.5m)で、昭和53年に宅地造成された際に川を暗渠にしました。
国道36号線から里塚霊園までの区間は、昭和59年~60年に宅地造成に伴い川を暗渠にし、こちらは直径1.8m~0.8m(霊園に近いほうほど細い管になる)の丸い管です。
札幌市が明らかにした旧河川図によると、この三里東排水は昔の川(こちらは三里川の支流か?)が流れていた所です。旧河川図では、今の三里東排水は薄い水色の太線で描かれ(右側の「宅地造成後の状況」)、昔の川は青い細線で描かれています(左側の「「旧水路のおおよその位置」)。
旧河川図を見ると、昔の三里川支流は、国道36号線を越えた今の美しが丘南公園(美しが丘2条7丁目)付近で3つの流れが合流しているのが分かります。
今回の地震では、この合流点付近で液状化や家の傾きが多数発生しました。この付近では、2003年の十勝沖地震の時も液状化が発生し、20軒の家が傾きました。
旧水路は国道36号線から羊ヶ丘通までは、美しが丘南公園前を通る里塚環状通の所を流れ、羊ヶ丘通から上流は、流れがやや北広島方向に変わり、里塚霊園まで達していました。
美しが丘5条9丁目の住宅街も今回、多くの家が傾く被害が発生しましたが、この旧水路に沿って被害が発生しています。
三里東排水の線上(旧水路上)付近では、国道36号線脇の地盤が陥没、大きな穴が開いたり、国道がへこんだり、国道から羊ヶ丘通に出る里塚環状通があちこちで沈下し、上下に波打ったりしました。
かつて川があった所でも被害が出ていない所はもちろんたくさんあります。しかし、清田区の場合、地震被害発生場所は、ほとんどがかつて川(沢)だった所ということが、今回の札幌市の資料でますます明確になってきました。
液状化などの被害は、清田中央、清田、平岡など清田区内のほかの地区でも発生しています。いずれもかつて川があった付近とみられています。これら地区の旧河川図も、札幌市は作成して住民に公開してほしいものです。
私たちはどういう土地に住んでいるのか、知りたいと思います。
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