2018年9月6日の北海道胆振東部地震で大きな宅地被害と建物被害が出た里塚霊園緑地帯隣接地区は、くぼ地の緑地帯を盛り土して住宅地との段差を解消する「押え盛土」と呼ばれる工法で対策工事を行います。札幌市が6月に着工し、10月ごろに終える予定です。

住宅地(右)に隣接する霊園緑地帯

 この地区は、美しが丘5条9丁目、同7条7丁目、同8丁目、同9丁目で建物被害が発生しました。里塚霊園緑地帯に隣接する地区で、霊園緑地帯側に引っ張られるように家が傾くなどの被害が発生しました。南美しが丘町内会によると、「全壊で避難が必要」6棟、「地盤沈下や家の傾き」21棟、「軽い被災」9棟の計36棟の被害があったといいます。

 霊園緑地帯は、住宅地と霊園の間にある空間です。

 この里塚霊園緑地帯は、昔は三里川支流が流れる谷でした。昭和59年(1984年)、60年(1985年)に宅地造成に伴い、三里川支流は埋め立てられ、川は暗渠河川「三里東排水」になりました。緑地帯の地下では、三里東排水が流れています。

 地元の人によると、あの地震で、この緑地帯は長さ150メートルに渡って地割れや亀裂、沈下が起きたといいます。宅地は緑地帯側に引っ張られるように沈下、傾いたといいます。

 市の調査によると、緑地帯沿いの宅地では全般に霊園緑地帯側に地表がずれて(水平移動)、最大で30センチに及んだといいます。

 さらに、地元の人によると、緑地帯は25センチ~30センチほど沈下したといいます。

主たる要因は宅地側と霊園側の地盤面の高低差に起因する滑り被害(札幌市)

 札幌市は調査の結果、この地区は里塚地区(里塚1丁目、同2丁目)や美しが丘地区(美しが丘3条6丁目、同1条7丁目、同2条7丁目)のような液状化による被害ではなく、「緑地帯と住宅地との高低差(最大で3メートル)に起因する地滑り被害」と結論を下しました。

「押え盛土」で宅地を支える

 その結果、市は「低い緑地帯を盛り土して、住宅地との高低差をなくすことで地震時の地形変形を抑制できる」とする「押え盛土」工法を昨年12月の地元説明会で提案、地元の南美しが丘町内会はこれに同意しました。

押え盛土を施す範囲

 この地区は、札幌市の調査によると、地下水位が5.5メートル~7メートルと深いそうです。市によると、一般に地下水位が5メートル以深だと、地表面に被害を及ぼす液状化は起きないとされているそうです。

 この地区では、里塚地区のように地中に薬液を注入して地盤強化を図る工事や、美しが丘地区のように地区内の道路下に地下水を排水する暗渠管を巡らせる工事は行わず、緑地帯の盛り土で対処することにしました。

 この地区は2003年(平成15年)の十勝沖地震の際も、今回ほどではなかったものの一部で建物被害が発生しました。その時も地元の要請で、一部緑地帯を盛り土しました。今回は、緑地帯の全面に渡って盛り土することで地震に備えるということのようです。

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