あしりべつ郷土館(札幌市清田区清田1条2丁目、清田区民センター2階)は、札幌市清田区北野3条3丁目に長さ500mに渡って残っている明治時代に造られた灌漑用水路「吉田用水」跡を、動画で紹介するDVDの制作を始めました。11月20日(土)には、現地での撮影・収録を行いました。

吉田用水跡で映像を収録するあしりべつ郷土館ボランティアスタッフ=清田区北野3条3丁目

緑色の線で示したところが吉田用水跡の緑地帯=了寛紀明さん作成

 吉田用水は明治25年(1892年)頃、今の北野、大谷地、月寒東などで農場を経営していた吉田善太郎さんという人が中心になって造った農業用水路です。

 今の北海道コカ・コーラボトリング本社工場(清田区清田1条1丁目)裏手の厚別川(あしりべつ川)から取水し、北野、大谷地方面に水を供給する長さ5㎞の灌漑用水路でした。

吉田用水の手入れ作業をする農家の様子=「清田地区百年史」より

 用水路は幅4m、深さ2mほどあったといいます。地主、小作人ら40~50人がスコップと島田鍬の手掘りで、わずか4カ月で掘ったといいます。

 これを契機に厚別川からは幾筋もの用水路が造られ、清田、北野の一帯が見事な水田地帯になっていったと言います。

 吉田用水は昭和45年(1970年)頃、地域の宅地化が進み、水田が無くなったことから、役目を終えました。大半は宅地化とともに用水路は埋められ、痕跡もなくなりました。

 しかし、北野3条3丁目の500m区間は、帯状の緑地帯として用水跡が厳然と残っています。これが、吉田用水跡であると知る人は地元でもほとんどいません。貴重な清田区の歴史遺産が忘れられていたのです。

吉田用水跡を歩く郷土館スタッフ

 あしりべつ郷土館は、この貴重な歴史遺産を広く伝えようと、DVDによる映像作品を制作し、区民や地域の子供たちに伝えていくことにしました。

 11月20日(土)には、吉田用水跡の現地で、郷土史家で郷土館ボランティアスタッフの了寛紀明さん(元小学校長)が説明する様子をビデオカメラで収録しました。また、コカ・コーラ裏手には、大正8年(1919年)建立の吉田用水記念碑がぽつんと立っています。これも収録しました。

用水路記念碑を撮影する園部さん。説明役は了寛さん=コカ・コーラ裏で

 撮影と編集は、郷土館ボランティアスタッフの園部真人さんが行っています。

 園部さんも元小学校長ですが、「時計台の鐘が鳴る」や「ガラスの町・小樽市」、「歴史ある港町・函館市」、「さけよふるさとへ」など数多くのドキュメンタリービデオ作品を制作。数々の賞を受賞している本格派で、清田区関係では「受け継がれる伝統―里塚小唄物語」のビデオ作品を制作しています。

かつての厚別川からの取水口付近も撮影

 このほか、数名の郷土館スタッフが撮影を手伝い、すべて自前で作品作りに取り組んでいます。

 吉田用水跡のDVD作品は、7、8分ほどの作品に仕上げ、年明けには完成させる予定です。

 あしりべつ郷土館は、清田区内の5つの町内会連合会でつくる運営委員会が運営しています。今回の映像作品は、運営委員会の事務局スタッフ(全員、清田区民)がボランティアで制作に取り組んでいます。

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