札幌市は、清田公園に隣接する現在の清田区民センターを清田区役所前の市民交流広場に移転新築する計画素案をまとめました。5年後の2029年度に完成、供用開始を目指すとしていますが、区民ホールと貸室を別の建物に分離配置する計画で、このままでは使い勝手の悪い区民センターになるのではと関係者や地域住民から懸念が持ち上がっています。
■地域交流拠点清田の賑わいづくりと利便性の向上を目指す

新清田区民センターが建つ予定の市民交流広場
区民センターを移転新築するのは、清田区役所周辺が地域交流拠点(※)に指定されているのに、地下鉄駅もバスターミナルもないために地域交流拠点の形成が進んでいないからです。清田区民センターを移転して少しでも人が集まる賑わいを作ろうというわけです。

現在の清田区民センター
現在の区民センターはまだ耐用年数が18年~38年あるとされていますが、それでも前倒しで新築するのは、上記のような事情があるからです。

地域交流拠点清田
この区民センターの移転新築計画は2020年11月、地下鉄東豊線建設促進期成会連合会(清田区、豊平区の全町内会連合会、商工団体、企業等20団体で構成)が「清田には地下鉄がないために地域交流拠点が進まない」として地下鉄の清田延伸を要望した席で、秋元札幌市長が「前倒して移転・建設する」と回答したことから始まりました。
また、現在の区民センターは最寄りのバス停から遠く、アクセスが不便という事情もあります。アクセスの悪さから現在の清田区民センターは札幌全10区の区民センターで最低の利用率になっています。
■区民ホールと清田図書館を一体化、貸室は区役所4階に
さて、市が構想している新清田区民センターは、区役所前の市民交流広場に建てる計画です。2階建て2400㎡の建物。この建物には区民ホール(460㎡)と、現在、区役所庁舎4階にある清田図書館(880㎡)を移設させます。エントランスホールにはフリースペースを作り、軽飲食や学習などもできるよう利用しやすいようにするとしています。

現在の清田区役所庁舎の配置図。市民交流広場に新清田区民センター(区民ホールと清田図書館)が建つ計画。区役所総合庁舎の4階右側に区民センターの貸室と事務室を造る計画。隣接市有地に駐車場を新設。
清田図書館と区民ホールを一緒にするという点が新しい要素であり、斬新な形と言えそうです。
そして、清田区民センターの貸室(集会室、視聴覚室、和室、調理室、陶芸室等、全部で640㎡)は、区役所庁舎4階の清田図書館があるスペースに配置する計画です。区民センター事務室(70㎡)も区役所庁舎4階に配置するといいます。
区民ホールと貸室・事務室が完全に分かれてしまう形です。これが問題であり、多くの関係者から疑問やブーイングが出ています。
区民センターの指定管理者である清田区民センター運営委員会の伊藤昭夫会長(前北野地区町内会連合会会長)は「区民文化祭などのときは、区民ホールと貸室が一体となって開催しています。離れ離れでは、区民文化祭はできません」といいます。
確かに、区民文化祭などでは、出演者のフラダンスや日本舞踊などの演者が舞台衣装で控室になる貸室と区民ホールを行ったり来たりしてごった返します。利用者の立場を考えると、区民ホールと貸室が別の建物で離れ離れというのは酷かもしれません。
本来は、区民ホールも貸室も同じ建物に入るのが一番いいのでしょうが、区民ホールとフリースペース、そして清田図書館を併設という新しい区民センターのコンセプトも斬新であり、期待する声もあります。
この新しいコンセプトを活かして、使い勝手のよい区民センターにする方法はないのでしょうか。
■貸室を区役所2階に造り、区民センターと空中回廊で結ぶようにした方がいいのでは
区民センターのホールと区役所庁舎4階の貸室をつなぐ専用回廊(導線)があれば、区民センターとしての一定の一体感は保たれます。
ただし、区民ホールの建物は2階建て、貸室は区役所庁舎4階。途中で専用エレベーターを造る必要があるなど難しい要素が生じてきます。
それならば、区役所2階の地域振興課や区長室などを4階(現在の清田図書館がある部分)に移して、区民センターの貸室や事務室を区役所2階に造ってはどうでしょうか。地域振興課などのある場所は区民センターが建つ場所と近く、空中回廊(スカイウェイ)で水平に結ぶことは難しいことではないのではないでしょうか。

区役所2階の区長室や地域振興課などのフロアと「新建物」(区民ホールと清田図書館=2階建て)は近接している。ここを空中回廊(スカイウェイ)でつなげば、区民センター(区民ホール+貸室)の一体感は保てる
実は、このアイデアは区役所内部からも出ているのです。「区民センターの貸室を2階に持ってきて、地域振興課などが4階に移ってもなんら支障はありません」というのだ。
区民センターの利用者のことを考えたら、この案がもっとも丸く収まると思うのですが、いかがでしょうか。せっかく素晴らしい区民センターを造るのですから、多くの人が納得できる形にしてほしいものです。
■2029年度オープン目指す

清田区役所庁舎と周辺
新しい市民交流広場は横にずらして区役所庁舎の真ん前に造ります。そして駐車場は今の駐車場を使うほか、新たに区役所敷地奥の未利用地を新たに駐車場にします。これにより駐車場は今の140台から180台程度に増やします。
ただし、現清田区民センターの駐車スペースは136台あることから、清田区民センターが区役所前に移転した場合、駐車スペースが足らなくなることも予想されます。
現在の区民センターは、まだ耐用年数があるので、解体しないでそのまま使用します。清田まちづくりセンターと清田地区町内会連合会事務所、清田地区福祉のまち推進センター事務所、あしりべつ郷土館は、現在の区民センターに残ります。
その他の現区民ホール、貸室は空きスペースになりますが、どう利用するかは今後、検討するとしています。
市によると、今年3月には基本計画を策定し、2025年度と2026年度で基本実施設計を行い、2027年度、2028年度に建設工事を実施。2029年度に供用開始の予定です。建設工事費は約20億円を見込んでいます。
■1月24日(金)区民センターで説明会を開催、パブリックコメント実施中 締切(1月末)迫る
市は、基本計画策定に向けて、広く市民の声を聞くとして、パブリックコメントを実施しています。締め切りは1月末です。
また、札幌市は新清田区民センターの移転整備計画の説明会を1月24日(金)18時30分から(開場18時10分)、清田区民センター1階区民ホールで開催します。どなたでも参加できます。
さらに、新清田区民センターの移転整備計画のパネル展を1月25日(土)、26日(日)11時~16時まで、イオン札幌清田店(旧西友清田店)2階イベントスペースで開催します。
(※)地域交流拠点
交通結節点(地下鉄・JR駅+バスターミナル)や区役所周辺で、商業・サービス機能、行政機能など多様な都市機能が集積し、人々の交流が生まれ生活圏域の拠点となるエリアのこと。清田では区役所やイオン札幌清田店がある一帯。市は清田を含む市内17か所を地域交流拠点に指定し、まちづくりを進めているが、清田だけ地下鉄・JRの駅がなく、交通結節点ができないために地域交流拠点の形成も進まない。
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