長年、清田区の歴史解明に取り組んできた郷土史研究家の了寛紀明さん(あしりべつ郷土館運営企画委員)が令和7年度の北海道文化財保護功労者表彰を受賞しました。表彰式が11月7日(金)、道立道民活動センターかでる2・7で行われました。

表彰式で受賞の挨拶をする了寛紀明さん=2025年11月7日、かでる2・7

 この賞は、北海道文化財保護協会が、道内の文化財の保護及び保護思想の普及に関し、多年にわたり実践功労のあった個人または団体に贈られるものです。昭和40年(1965年)から始まった大変名誉ある歴史ある表彰で、今年度で61回目となります。

表彰式の様子

 了寛さんは函館市生まれで、長年、札幌市内の小学校教員として勤務し、清田小学校と大谷地小学校の校長を経て2004年に退職。

 地域の郷土史研究を始めたのは平成3年(1991年)、小野幌小学校(厚別区)の100周年事業に関わったことからだといいます。地域の人からたくさんの昔の生活道具や農機具が寄贈され、これがきっかけとなり札幌の郷土史研究を始めました。

 そして1998年に清田小学校の校長に就任したのをきっかけに、清田地域(昔のあしりべつ地域)の歴史調査を本格化します。

角幸博理事長から表彰状授与

 厚別(あしりべつ)地域は昔、月寒村あるいは豊平町のはずれの集落だったため、詳細な歴史は未詳の状態でした。了寛さんはそこに光を当て、幕末から今日に至る清田の歴史をつまびらかにしようと決意しました。

了寛紀明さんに贈られた表彰状

 北大図書館、道立公文書館、道立図書館、札幌市公文書館、札幌中央図書館などに足を運び、清田地域に関する歴史資料の収集に努めました。その結果、いままで知られていなかった清田地域の歴史的事実をかなり発掘しました。その一部は次の通りです。

〇昔の地名である「厚別(あしりべつ)」の語源と由来の解明。
〇幕末の安政4年に開削された「札幌越新道」のあしりべつ地域の道筋解明。
〇明治6年、清田地域最初の入植者である長岡重治の功績と足跡の解明。
〇明治6年、札幌本道(今の旧道)の開削と地域の変化の解明。
〇明治18年創建の厚別(あしりべつ)神社の位置の特定(今の清田緑地内)および大正6年に現在地に移設・創建された厚別神社「旧本殿」の沿革を解明。
〇明治25年開削された「吉田用水」の沿革と歴史的意義(これにより清田が水田地帯として発展した)の調査研究。吉田用水は清田の厚別川から取水し、今の大谷地・流通センター方面まで延長5㎞の農業用水路で、その跡が今も北野に長さ500m残っている事実を解明。
〇明治から昭和の終戦まで、平岡から真栄にかけて陸軍の演習場があった沿革を解明。
〇明治期、あしりべつ地域に創設された厚別(あしりべつ)小学校(現清田小学校)、三里塚小学校、公有地小学校(現有明小学校)の変遷を解明。
〇昭和7年~戦時中まで北野から月寒東にあった「月寒ゴルフ場」の調査研究。月寒ゴルフ場は今の札幌ゴルフ倶楽部(輪厚)の前身。
〇昭和40年以降の清田区における住宅団地造成の調査研究および清田が農業地帯から住宅街に変貌を遂げていく過程の調査研究。

 これらの研究結果は、研究冊子(シリーズ「清田発掘」)としてまとめ、これまでに100冊に達しています。これらはすべてあしりべつ郷土館に置き、閲覧可能にしています。

 また、あしりべつ郷土館ホームページでも「きよたのあゆみ」として公開しており、こちらは70本の郷土史の話が閲覧可能です。しかも、毎月、1本の割合で追加しています。

 了寛さんは調査研究だけでなく「郷土史の語り部」としても活躍してきました。2019年にあしりべつ郷土館運営企画委員に招かれ、子供たちや大学生、一般社会人相手に歴史講座、出前講座、まち歩き講座などで清田の歴史を語り続けてきました。

 郷土愛の源泉である郷土史の啓もう普及に努めてきたのです。

 あしりべつ郷土館は、清田区内の町内会(町内会連合会)が運営していますが、了寛さんは、その学芸員的立場で、郷土館の学術的価値のアップを支えてきています。

 こうした活動が関係者の目にとまり、今回の表彰につながりました。なお、今回の表彰は、札幌市文化財課と札幌市教委が了寛さんの研究と普及活動を高く評価し、北海道文化財保護協会に推薦したことで実現しました。

北海道文化財保護協会など関係者と記念写真

 表彰式では、少し緊張気味だった了寛さん。北海道文化財保護協会の角幸博理事長(北大名誉教授)から表彰状が授与されました。

 そして、受賞者あいさつで了寛さんは「地域の皆さん、関係者の皆さんに助けられ、やってこられました。この受賞を機に、さらに研究を深めて参りたい」と延べました。

 了寛さんは2021年、清田区長から感謝状(郷土史の調査研究・啓発普及活動)を贈呈されていますが、今回の表彰はとてもビッグで、了寛さんはとても喜んで、晴れやかな表情でした。

今年度の3名の表彰者。中央が了寛紀明さん

 今年の功労者表彰は、了寛さんと、深川市の伊藤勝文さん(深川市の文化財保護活動、猩々獅子五段くずし舞の保存活動)、別海町の川村俊也さん(郷土の貴重な写真、音源、書籍、地図、文書を数多くデジタル化して公共機関に寄贈)の3名が表彰されました。

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