札幌市清田区の真栄第四町内会(吉田和久会長、約480世帯)は3月30日(水)、清田区真栄4条1丁目の急傾斜地(札幌市が所有管理する緑地)と近くの住宅地を、北海道と札幌市が土砂災害警戒区域に指定する動きについて、「警戒を要する危険な土地というなら、当該急傾斜地は札幌市が所有管理する土地なのだから、危険を除去する工事を先に行ってもらいたい」との要望書を北海道と札幌市にそれぞれ提出し、「現状では警戒区域の指定に同意できない」と申し入れました。
道によると、札幌市内の土砂災害警戒区域の指定は、予定していた約1000か所を今年3月末までに終えましたが、この真栄4条1丁目のがけ地だけは住民側の同意が得られず指定できていません。
道と市への要望は、真栄第四町内会の吉田会長と土砂災害警戒区域に指定される区域に住む住民代表らが出席しました。
さらに道と札幌市への申し入れには、真栄第四町内会員で同町内会顧問の宮下准一道議(自民党、清田区)も出席し、札幌市への申し入れには北村光一郎市議(自民党、清田区)も加わりました。
近年、大雨などによる土砂災害が頻発していることから、国は土砂災害防止法(平成13年4月施行)に基づき、土砂災害警戒区域(イエローゾーン)と土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)の指定を全国的に進めています。
警戒区域の指定基準は、傾斜度30度以上で高さ5m以上のがけ地とその周辺地域。レッドゾーンは、イエローゾーンより危険度が高い地域という分類です。指定の狙いは、住民への注意喚起です。
実際の指定は北海道が行い、札幌市は住民対応の窓口を務めるほか、避難経路の明示などを行うとされています。
真栄4条1丁目では、厚別川(あしりべつ川)の河岸段丘のがけ地(長さ350m)が区域指定の対象になっています。このがけ地のすぐ下には生活道路1本を挟んで住宅街が迫っています。この住宅街の43戸が土砂災害警戒区域の指定範囲内になっており、うち8戸はレッドゾーンの区域内です。
町内会側の要望は次の通りです。
①当該がけ地は札幌市が所有管理する土地なので、警戒区域に指定するような危険個所というなら、札幌市として速やかに危険除去のハード工事を行ってほしい。工事に当たっては、当該がけ地が「清田区真栄特別緑地保全地区」に指定されていることから、ノンフレーム工法など緑を生かした工法で行ってほしい。
②ハード対策工事について、札幌市との間で具体的な確約が取れるまで、土砂災害警戒区域等の指定はしないでほしい。
③引き続き、道と札幌市には、当町内会との間で定期的な協議の場と情報交換の場を設けてほしい。そして適切な時期に確実に回答をしていただきたい。
この問題は2018年9月、道と札幌市が清田区民センターで行った清田区内の土砂災害警戒区域指定に関する住民説明会で、当該がけ地と周辺の住宅街が土砂災害警戒区域に指定されることが突然発表されたことから始まりました。
住民からは「札幌市が宅地開発を許可した住宅地が、約30年たって市から『そこは危険だ』と言われても、納得できるものではない」「傾斜30度以上、高さ5mという基準で一律機械的に指定しようとしている。地質調査もしていない。本当に危険なのか納得できない」「地価も下がる懸念がある」「危険というのなら、がけ地は市有地なのだから市が率先して対策工事を行うべきだ」といった声が上がりました。
問題を重視した真栄第四町内会は2018年10月25日、今回と同じような要望書を札幌市と道に出し、同年11月20日には道と札幌市による説明会が真栄第四町内会館で行われました。
しかし、道の説明はあいまいで、説明会は紛糾、散会。道は「2019年1月に再び説明会を行う」としましたが、その後、説明会は行われず、なぜか道と市の動きはぱったりと止まってしまいました。
再び動きがあったのは2021年からです。2021年10月2日、道と札幌市の説明会が久しぶりに真栄第四町内会館で行われました。
さらに、同年11月29日には、真栄第四町内会と地元住民、札幌市と道の担当者による合同の現地確認調査も行いました。これは道と札幌市の担当者、町内会役員や地元住民が一緒に当該がけ地をよじ登って、がけ地の状態を実際に確認するというものでした。
しかし、札幌市の対応は「ハード対策工事は行わない。植生管理で対応する」との姿勢を崩さないため、今回の要望書の提出に至りました。
同時に、真栄第四町内会は「現状では土砂災害警戒区域の指定には同意できない」と道と札幌市に伝えました。土砂災害警戒区域の指定には、住民側(町内会)の同意は必要条件ではありませんが、町内会側の要望にはもっともな点があり、道と市が指定を強行するのはかなり難しいのではないかと思われます。
道と市は、「要望内容をしっかりと検討する」と回答しました。
真栄第四町内会の「土砂災害警戒区域等の指定に対する要望書」全文は以下の通りです。
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土砂災害警戒区域等の指定に対する要望書
令和4年3月30日
北海道知事 鈴木直道様
札幌市長 秋元克広様
清田区真栄第四町内会 会長 吉田和久
貴職におかれましては、住みよい安心安全なまちづくりに日夜ご尽力されていることに心より経緯と感謝を申し上げます。
さて、土砂災害警戒区域等の指定と、指定予定箇所(急傾斜地)の安全性に関して、当町内会は平成30年9月30日、平成30年11月20日、令和3年10月2日に行われた説明会及び令和3年11月29日に行われた合同現地確認・意見交換会、さらには土砂災害警戒区域等の指定に関する要望書(平成30年10月25日、真栄第四町内会長)において、指定そのものの問題点を指摘するとともに、札幌市が管理する指定予定箇所に関する具体的な安全対策を求めて参りました。
その中で、土砂災害警戒区域等の指定に係わる手続き上の問題点及び十分な調査が行われていないのではないかという疑問、更には法そのものに対する釈然としない思いなどを伝えると同時に、札幌市に対しては当該指定予定箇所が市の所有地であることに鑑み、関係住民の不安を解消する対策としてノンフレーム工法によるハード対策工事の実施と管理の徹底を求めてきたところであります。
しかし、市が管理する指定予定箇所の対策についての札幌市の見解は、当該急傾斜地の現状に踏まえると、ハード対策工事を行うものではなく、植生管理を新たに行うことで対応したいとのことでありました。
以上の経緯に踏まえると、住民側の要望が今後実現される見通しが立たないばかりか双方の見解の相違が大きいため、現状では当該区域の指定について同意することができません。
したがいまして、ここに改めて以下のとおり要望いたします。
1 要望箇所
札幌市清田区真栄4条1丁目251-1他
(土砂災害警戒区域箇所番号:Ⅰ-0-239-239)
(清田真栄特別緑地保全地区(札幌市管理地))
2 ハード対策工事について(札幌市への要望)
当該箇所(急傾斜地)は札幌市の管理地であることから、土砂災害警戒区域に指定するような危険箇所であるとするならば、札幌市として速やかに必要なハード対策工事を講じていただきたい。
工事にあたっては、ノンフレーム工法を採用するなど特別緑地保全地区に指定されている当該地の住環境に配慮し、緑を生かしたものとし、レッドゾーンに指定される予定の宅地に係る斜面の区域から始めるなど、当該傾斜地の危険度に応じて順次実施していただきたい。
3 土砂災害警戒区域等の指定について(北海道、札幌市への要望)
当該箇所のハード対策工事について札幌市との間で具体的な確約が取れるまでの間は、土砂災害警戒区域等の指定をしないでいただきたい。
更に、当該指定予定箇所を所有する札幌市、並びに、当該箇所について行政手続きを進める北海道と関連住民とは、急傾斜地の安全性と管理について今後も密接な当事者の関係が継続することから、当町内会との間で定期的な協議の場と情報交換の場を設けていただきたい。
4 以上の事項についてご検討の上、適切な時期をもって確実に回答をしていただきたい。
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