札幌市は2月18日(月)に開かれた定例市議会本会議で、地下鉄清田延伸について「人口減少局面に入り、交通需要の面からは整備の必要性はないと考える。しかし、清田は都心部へのアクセスに課題があり、引き続き地域交流拠点づくり、まちづくりの観点から地下鉄延伸を含め検討していく」との考えを明らかにしました。

札幌市議会=2月18日

 宮村素子議員(自民党、清田区選出)の代表質問に、吉岡亨副市長が答弁しました。

 札幌市はここ10年ほど、清田延伸について「需要が足らず採算が合わない」として延伸に否定的な姿勢をとってきました。

宮村素子議員

 しかし、昨年11月15日、現行の札幌市総合交通計画(平成24年1月策定)を見直す委員会に「清田の地域交流拠点整備のためにも地下鉄延伸を検討」との新たな視点を打ち出しました

秋元市長

 今回の吉岡副市長の答弁は、その流れに沿った発言です。

吉岡副市長

 まちづくりの観点、清田の地域交流拠点形成の観点から地下鉄延伸が必要―これはこれまでも、清田区と豊平区の町内会連合会などでつくる地下鉄東豊線建設促進期成会連合会(牧野晃会長)が市に何度も要望してきたことです。市が地域住民の声を取り入れてくれたことに、地下鉄期成会や町連の関係者からは歓迎と期待の声が上がっています。

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2月18日の宮村素子議員と吉岡亨副市長の質疑は次の通りです。

■宮村議員

 現在、札幌市の将来交通に対する基本的な考え方や交通戦略を示す総合交通計画の見直しに向けて検討を行っているとのことであり、今年度から、学識経験者や行政機関、関係団体、市民等により構成される検討委員会を設置し検討を進め、来年度末に計画を改訂する予定と聞いています。私も清田区民の1人として、長年要望し続けている地下鉄延伸について、前向きに検討を進めてほしいと切に願っているところであります。

 そこで質問ですが、総合交通計画見直しの議論を踏まえ、清田方面への地下鉄延伸について、現時点での市長の認識を伺います。

■吉岡亨副市長

 現在、総合交通計画の見直しに向けた検討を進めており、先般開催した専門部会では、交通需要やまちづくりの観点から公共交通ネットワークの方向性について議論いただいたところであります。

 その中でも議論されています通り、今後は人口減少局面の時代に入り、輸送力の拡充を要するほどの需要は発生しないことが予測されます。このため、地下鉄等の大量輸送機関の新たな整備について交通需要という面からは全市的に、その必要性はないと考えているところであります。

 一方で、まちづくりの面からみて、市内の多くの地域交流拠点が地下鉄、JR駅を中心として高い機能性が確保されているのに対し、清田は他の拠点に比べて都心部へのアクセス性に課題があると考えているところであります。

 清田方面への地下鉄延伸につきましては、地域住民の皆様から数多くのご要望をいただいています。現状では、採算性の確保など難しい課題があると認識しているところではありますが、引き続き地下鉄の実現性など様々な視点から公共交通の機能向上に向けた検討を行ってまいります。(一部聞き取れないところがありました)

 

 地下鉄を清田方面まで伸ばす計画は40年前の昭和54年(1979年)にさかのぼります。札幌市は昭和54年、札幌市総合交通対策調査審議会(総交審)を開いて検討し、南北線(麻生―真駒内)、東西線(新さっぽろ―宮の沢)、東豊線(栄町―北野)の3路線(総延長50キロ)を建設するという「地下鉄50キロ構想」をまとめました。これが地下鉄清田延伸計画のルーツです。

 市は2001年に再び総交審を開いて清田延伸を検討し、「地下鉄の延伸に向けた検討を進めていくことが必要」との結論に達しました。ルートは従来の北野通から国道36号線に変更し、終点を清田区役所周辺としました。

 しかし、その後、市は「清田延伸は黒字が見込まれず、難しい」と姿勢を180度変えてしまいました。平成24年(2012年)1月に策定した現行の札幌市総合交通計画では、地下鉄清田延伸計画はまったく記載がありませんでした。

 今回、その改訂作業の中で、「清田のまちづくりの観点から検討する」と市が姿勢を変え始めたのです。今回の吉岡副市長の議会答弁を含め、この点が大いに注目されるところです。

 地下鉄の清田延伸区間は、札幌市の地下鉄建設計画で唯一積み残しになっている部分です。

 本来、公営交通は採算性のモノサシだけで判断されるべきではないはずです。地域のまちづくり、税負担の公平性、地域住民の足の確保と住民福祉の向上、札幌市全体の均衡ある発展などさまざまな観点から検討すべきだと思います。

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