地下鉄東豊線建設促進期成会連合会(会長:牧野晃清田地区町内会連合会会長)は11月24日(火)、札幌市役所を訪ね、秋元克広札幌市長に要望書を手渡し、「地下鉄東豊線の清田区への延長」を重ねて要望しました。

要望書を秋元市長(手前)に渡す牧野会長

 期成会は毎年7月に市長に要望活動を行ってきましたが、今年はコロナの影響などで2度延期し、この日の要望となりました。また、毎年、清田区、豊平区の各町内会連合会会長や地元選出の市議、道議ら総勢20名以上で要望活動を行っていますが、今年は感染防止の観点から人数を絞り、牧野会長ら3名で市長に要望しました。

 期成会は清田区の清田、清田中央、北野、平岡、里塚・美しが丘の5町連と、豊平区の豊平、美園、月寒、福住、東月寒の5町連、清田地区商工振興会、札幌清田ライオンズクラブの12団体で構成しています。

 要望書の全文は次の通りです。

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札幌市長 秋元克広様

地下鉄東豊線の清田区方面への延長について

地下鉄東豊線建設促進期成会連合会 会長 牧野晃

 新型コロナウイルスは、札幌市においても多くの感染者、亡くなる方を出すなど猛威を振るっており、収束が見通せない中、不安は募るばかりです。こうした中、貴職におかれましては日夜、市民の先頭に立ってコロナ対策に邁進されており、市民として大変心強く思うとともに、そのご尽力に心より敬意を表するものであります。

 さて、当地下鉄東豊線建設促進期成会連合会は、昭和56年(1981年)の結成以来39年間にわたって清田区方面への路線延長について要望活動を続けてきました。そもそも清田方面建設を打ち出したのは札幌市です。これは市の長期計画にも正式に位置づけた計画であり、市議会でも明言するなど、いわば市民、住民に正式に約束したことです。それを果たしてくださいと、私たちはお願いしているのです。市の清田方面への地下鉄建設計画を信じて、期待して清田区に家を建て移り住んだ住民は数多くいます。本社を清田区に移した企業もあります。

 札幌市が昭和54年(1979)年に打ち出した「地下鉄50キロ構想」とそれに基づく地下鉄建設計画の中で、「清田区方面」の区間だけが唯一実現せず、積み残しになっているのです。その清田方面にも、多くの札幌市民がいることを忘れないでいただきたい。

 豪雪寒冷の大都会・札幌市では、地下鉄は特に冬季間、非常に快適な交通機関です。しかし、私たちは札幌市民であるにもかかわらず、日常生活においてこの恩恵に十分に浴することができないでいます。都心部への交通アクセスも他区に比べて時間がかかり、日常的に大変不便を感じています。

 札幌市の総合交通計画が今年3月改訂されました。この中で、地下鉄の清田方面延伸については、「近年、清田区において人口が減少しており、事業採算性などを勘案した慎重な検討が必要です」との記載になっています。そして、2030年度までを前期、中期、後期に分け、その中で「前期」に「清田方面公共交通機能向上の検討」をするとしております。これは2030年冬季オリンピック・パラリンピック札幌招致の動きと関連して検討するものと理解いたします。ぜひ、地下鉄を清田方面に延伸するという決定、決断を切に切に地域住民の総意としてお願い申し上げます。

(1)清田区のまちづくりに必要不可欠な地下鉄

 札幌市は、交通インフラと都市機能を集約して各地域におけるまちづくりの核となる「地域交流拠点」の形成に力を入れています。しかし、札幌市内に17カ所指定した「地域交流拠点」の中で、清田地区だけは「地域交流拠点」の形成が全く進んでいません。原因は明らかです。17の拠点の中で、唯一、清田だけが地下鉄もJRもなく、従ってバスターミナルもないからです。

 「地下鉄駅がないために、バスターミナルもできず、『地域交流拠点』の形成が全く進まない」という、ここ数年来の私たちの意見に対して、札幌市は今年8月と10月、「地域交流拠点清田の拠点機能向上に向けた官民連携によるまちづくりの基本的な考え方」を発表しました。

 これはイオン平岡の一部施設の再整備に連動して地域交流拠点「清田」を形成しようという官民連携の取り組みだといいます。なんとか清田の地域交流拠点の実現に向けて動かそうという姿勢は評価しますが、距離の離れたイオン平岡と清田地区をどう連携させ、清田地区の地域交流拠点をどう形成するのか、市の提案はただ「効果的な取組を展開していきます」と抽象的に述べるにとどまり、まったく具体像が見えてきません。

 また、これによって都心部へのアクセス不便性が解決するものでもありません。他の地域交流拠点は軌道系交通機関の駅があり、都心部へのアクセスの良さが拠点形成の大きな要素になっています。

 清田地区も地下鉄を延伸することで、地域住民の利便性は高まり、人や都市機能が集まり、地域交流拠点も形成されるものと考えます。清田地区の地域交流拠点形成には、他の拠点と同様に地下鉄駅が不可欠です。

 清田区は、豊平区から分区した際、まちづくりの指針となる「清田区まちづくりビジョン2020」(目標年次2020年)を地域住民とともに策定しました。そこには、清田区役所周辺地区を「地域中心核」と位置づけ、地下鉄東豊線を国道36号線沿いに清田まで延長するまちづくりプランが描かれています。

 具体的には、「地下鉄駅などのターミナル機能と文化・商業施設、公共施設などをあわせ持つ地域中心核の形成が望まれる」と記載し、地下鉄清田駅開設のイメージ図を載せて、区民に発表しました。

 清田区発足時の初代清田区長も、「将来的なことを考えると、しっかりとした交通機関が整備されれば、より住宅地として発展していくと思います。例えば、地下鉄東豊線の延長は住民からも要望が出ていて、地域の発展につながる重要な要素です」(1997年11月1日北海道新聞)と、地下鉄延伸の必要性を明言していました。

 清田区は分区して20年以上経ちますが、地下鉄は勿論、バスターミナル、警察署、ホテルなど何一つ都市機能の整備が進んでいません。その最大の要因は、市の計画にも清田区の計画にもあった地下鉄がないからです。

 清田区は、地域中心核(地域交流拠点)がないために近年、大型商業施設等が区内にばらばらに立地し、まちづくり計画などまったく無いに等しい状況です。地下鉄駅がないためにバスターミナルもなく、区内のバス路線もばらばらで、不便極まりない状況です。

 地域交流拠点の形成=まちづくりの観点からも、清田方面への地下鉄延伸をぜひご決断していただきたいと強く要望致します。

(2)冬季五輪招致と札幌ドーム周辺の農業研究センターの土地活用について

 昨年7月、札幌市が札幌ドーム周辺に「スポーツパーク」をつくる構想に着手したことが公表されました。予定地は、国道36号線と羊ヶ丘通に挟まれた北海道農業研究センターの敷地およそ60ヘクタールです。

 構想では、2030年冬季五輪・パラリンピック招致に合わせ、ここにアイスホッケー場やラグビー場など老朽化した月寒体育館の機能を引き継ぐ施設や、冬季競技強化拠点ハイパフォーマンスセンターの誘致、五輪公式スポンサー企業のパビリオン、五輪記念モニュメント等が並ぶ公園にするとのことです。

 この構想は、近年、私たちが毎年要望してきた「札幌ドーム周辺地域の活性化」という要望と基本的に同じものであり、市の構想に強く期待するものであります。私たちは、このスポーツパーク構想が実現すれば、福住―清田間の活性化に大きく寄与し、地下鉄延伸に弾みがつくものと考えております。

 さらに、スポーツパークだけではなく、多くの集客が見込める施設の立地などをご検討いただければと切に願います。

 北海道農業研究センターの用地のうち、国道36号線と羊ヶ丘通に挟まれた土地は、主に稲作研究の水田や動物衛生研究拠点の施設があるほか、4階建ての職員住宅が10棟建ち並んでいます。私たちが昨年、同センターに確認したところ、1棟18世帯だけが住んでおり、9棟は無人ということです。

 稲作研究が大事であることは理解しますが、今日、多くの車の行き交う都市化した街なかで北海道の稲作研究を行うよりも、札幌市民のために開放していただき、札幌市のまちづくりに寄与する土地有効活用を考えるべきではないでしょうか。

 この点についても昨年、同センターに問い合わせたところ、「スポーツパーク構想もそうですが、札幌市からお話があれば検討してまいります」との回答で、頭から拒否する姿勢ではありませんでした。

 ぜひ、市におかれましては、北海道農業研究センター側と協議を進めていただき、2030年札幌冬季五輪招致と関連して、この土地の有効活用を図っていただくよう強く要望致します。

 札幌は昭和47年(1972年)の冬季オリンピックを機に、地下鉄や地下街などの都市機能が一気に整い、大都市へ発展しました。五輪は、単に国際競技を開催することだけでは、開催都市の市民として希望を抱けません。五輪を招致開催することで、一気に都市機能が整備され、まちづくりが進み、市民の暮らしが豊かになるからこそ、私たちは招致に期待し、賛成するのです。

 2030年冬季五輪の招致にあたっては、ぜひ、北海道農業研究センターの土地有効活用とともに、地下鉄東豊線を清田まで延長し、1972年札幌冬季五輪のように、後世に引き継ぐ都市機能として整えていただきたいと強く望みます。

 この土地の有効活用が、この地区だけでなく札幌市全体の活性化につながるものと確信するものです。

(3)新千歳空港、北広島方面を視野に地下鉄延伸を

 札幌市の人口はほぼ横ばいで、いずれ減少期に入ってきます。こういう状況で地下鉄乗降客を増やすには、新千歳空港の乗降客や、北広島市、恵庭市方面の大型商業施設、工業団地の通勤者、利用客の取り込みが重要と考えます。

 新型コロナウイルスの影響で、新千歳空港の乗降客は激減しましたが、いずれ回復することを見越して、その取り込みを図る方策が必要です。交流人口の増加を図り、積極的に地下鉄に乗降客を取り組んでいく発想が重要と考えます。

 実際、清田区に居住する私たちは、近年、清田区内の国道36号線と羊ヶ丘通を通過する車の数が激増しているのを肌で感じています。北広島、恵庭、千歳方面と札幌市内を行き来する車両が多く、朝のラッシュ時など、北広島方面に行く車の方が渋滞を起こしているほどです。近年、かなりの交流人口が清田区内を行き来していると実感します。

 かつては札幌の街並みは福住駅近くの北海道農業研究センター(北海道農業試験場)までだったかもしれません。そして今でもそういう昔の意識の市民も多いことでしょう。しかし、今では、その先に多くの住民が居住する清田区が開け、さらにその向こうに北広島市大曲の大型商業施設集積地区や工業団地が続いています。この区間にも多くの交通需要があるのです。地図を見ると、地下鉄東豊線が福住駅止まりというのは、いかにも中途までという印象です。

 また、清田区には、市が造った広大な墓地「里塚霊園」もあります。地下鉄が福住駅止まりでは不便です。墓参の方の交通利便性もぜひ考慮していただきたく存じます。

(4)清田方面だけ採算性を持ち出す不公平

 市はここ数年、「採算性がないので、清田延伸は困難」と言ってきました。確かに、厳しい財政事情の現在、採算性は重要です。私たちはそれを否定しません。でも、公営交通は「採算性」のみで判断するものなのでしょうか。

 札幌市は、前市長の時から「30年で累積黒字」が地下鉄認可の「国の基準」だと私たちに言ってきました。そして「その基準をクリアできないので、清田延伸はできない」と言ってきました。

 では、札幌の東西線と東豊線はどうなのでしょうか。30年で累積黒字になるのでしょうか。なりません。「30年基準」を達成できないのです。両線とも累積赤字を多く抱えているのが実態です。

 30年で累積黒字にはならないけども、公営交通なので「市民の暮らしを支えるため」「住民の交通利便性を高めるため」「地域の活性化のため」「地域の福祉向上のため」「住民の交通権の確保のため」「税負担の公平性」「地域中心核形成のため」等さまざまな観点から、時の市長が判断し建設してきたのではないでしょうか。市民の暮らしを支える公営交通だからこその判断です。採算性だけの判断では、東西線も東豊線も建設できなかったはずです。

 豊平区東月寒や清田区方面だけ「30年黒字」基準なるものを持ち出して「困難だ」と切って捨てるのは全く納得がいきません。

 こうしたことは、道外他都市の公営地下鉄についてもいえます。名古屋市、京都市、福岡市など多くの都市の公営交通の地下鉄も、多くの累積赤字を抱えながらも営業しているのが実態です。赤字は決して好ましいことではありませんが、各都市とも採算性だけではない判断をしているのだと思います。

 私たちは、市のいう「国の30年基準」について、そういうものがあるのか、国土交通省に問合せしました。そうすると、「30年」は一応の目安かもしれませんが、法律や規則など明文化された基準などないことが分かりました。

 公営交通の鉄道建設は、採算性は勿論大事ですが、前述したとおり、「市民の暮らしや福祉の向上、地域活性化」など様々な観点があって、総合的に判断して決めるものではないでしょうか。

(5)清田方面は人口増と発展のポテンシャルがある

 札幌市は、総合交通計画改訂版で「近年、清田区において人口が減少しており、事業採算性などを勘案した慎重な検討が必要」と書いていますが、人口減は地下鉄がないことが大きな要因と、私たちは考えます。

 確かに、20代の若い層は、いったん清田区からの転出する人が多いかもしれませんが、それは地下鉄がないことによる都心部への交通不便によるものであります。

 しかし、清田区は緑が多く、住宅環境の良さから子育て世代の人口は逆に増えており、地下鉄があればむしろ人口増に転じる可能性のある区です。

 現に、今でも、清田区内では子育て世代向けに一戸建ての住宅分譲地の造成販売が活発に行われています。地下鉄が来れば、清田地区周辺に多くのマンションが建つことも容易に予想されます。さまざまな民間投資も行われるようになるでしょう。清田区は、企業立地などが進み発展する北広島、恵庭、千歳方面につながるゲートウェイでもあり、ポテンシャルのある区であると私たちは考えます。

 清田区誕生から20年余、私たちは安心安全で、且つ、緑多い環境の良いまちづくりに取り組んで参りました。美しい街並みづくりにも取り組んできました。これが、子育て世代の人口増にもつながっていると確信しております。

 「清田区まちづくりビジョン2020」は、一つは「地下鉄延伸」による地域中心核づくり等のハード面、もう一つは「安心安全で、緑あふれるまちづくり」のソフト面の主に2つの側面から成り立っていました。ソフト面は、地域住民と行政(市や清田区など)が一緒になって努力し、成果を出してきました。しかし、ハード面の地下鉄延伸はまったく進まず、従って地域中心核も形成されていません。ハード面は、住民の努力だけではどうにもならないことです。

 札幌市は、このところ創成スクエアや都心アクセス道路MICE、新幹線駅その他、札幌都心部の再開発・まちづくりばかりが目につきます。どうか清田方面など都心部以外にも力を入れていただきたいと強く要望致します。

 札幌市総合交通計画改訂版で、地下鉄清田方面への延長が改めて検討されることになりました。私たちは一日も早い地下鉄延伸の決定を待ち望んでいます。その理由は、この要望書で縷々述べた通りです。一刻も早い建設決定のご判断と着工を地域住民の総意として、ここに強く要望申し上げます。

地下鉄東豊線建設促進期成会連合会
会長(清田地区町内会連合会会長)牧野晃
会長代行(平岡地区町内会連合会会長)鎌倉功
副会長(豊平地区町内会連合会会長)中川昭一
副会長(美園地区町内会連合会会長)楠本武男
副会長(月寒地区町内会連合会会長)池田博
副会長(福住地区町内会連合会会長)石黒信一
副会長(北野地区町内会連合会会長)伊藤昭夫
副会長(里塚・美しが丘地区町内会連合会会長)平目伸二
理事(清田地区商工振興会会長)斎藤忠明
理事(札幌清田ライオンズクラブ地下鉄担当代表)山田敏夫
監事(東月寒地区町内会連合会会長)有田京史
監事(清田中央地区町内会連合会会長)鈴木亨

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