日本ハムは、新球場の候補地として札幌市南区の道立真駒内公園と北広島市のきたひろしま総合運動公園予定地の2カ所に絞って検討している、という報道が盛んに行われています。でも、札幌ドームという立派な球場があるのですから、これを活用する道を札幌市も日本ハムも真剣に再検討していただけないものでしょうか。

札幌ドーム

 毎日新聞が1月30日、「日ハム本拠地 北広島へ」という報道をしましたが、他の新聞、テレビはどこも追いかけていません。まだ決まっていないようです。

札幌ドームの日本ハム戦

 そもそも日本ハムは、北広島にボールパークを造った場合の集客に不安を持っているのではないでしょうか。昨年秋、「真駒内公園を追加提案してほしい」と札幌市に申し入れてきたのは日本ハムでした。もし、北広島で集客に自信があるなら、札幌市に真駒内の追加提案などお願いしないでしょう。

 北広島の場合、ナイターの試合開始に札幌のファンは仕事を終えた後に間に合うのでしょうか。試合が終わるのは午後9時~10時ごろです。それから20分も北広島駅まで歩いて、JRで札幌まで帰り、最後に家に着くのは一体何時になるのでしょうか。

夢のようなボールパーク構想

 北広島の場合、日本ハム球団は商業施設やレジャー施設、ホテルなどを併設した夢のようなボールパーク構想を発表しましたが、本当にそんな大規模施設を北広島に建造して、それに見合うお客は来るのでしょうか。

 バブル時代に北海道あちこちに造られた大規模レジャー施設・リゾート開発を思い起こしてみましょう。それらはことごとく集客不足(需要不足)でつぶれていきました。それらに巨額のおカネを貸していた北海道拓殖銀行までがつぶれてしまったのです。

 それに、日本ハムが新しいドーム球場を造ったら、日本ハムの売り上げに大きく依存してきた札幌ドームの経営が立ち行かなくなるのは明らかです。

 秋元札幌市長自身が記者会見等で「北海道、札幌近郊の市場規模の中で(ドームと新球場が)共存していくのは難しい」と認めているのです(北海道新聞2016年7月27日)。

 札幌ドームは札幌市が692億円の巨費をかけて建設しました。閑古鳥が鳴き、苦しむ札幌ドームの姿を横目に見ながら、札幌のファンは今までのように純真に北広島で日本ハムを応援できるでしょうか。

 これは、真駒内公園に造った場合にもあてはまります。真駒内公園に新球場を造っても、札幌ドームの経営は成り立たなくなるでしょう。札幌圏に2つのドーム球場が共存し成り立つとは到底思えません。

道立真駒内公園

 さらに、真駒内公園の場合は、反対の市民運動が起きているように、貴重な自然や閑静な環境があります。

 また、真駒内公園は1972年札幌オリンピックの開会式が行われ、メーン会場となった場所です。札幌の聖地であり、貴重な歴史遺産でもあります。先の札幌オリンピックが契機となり札幌は飛躍的に発展しました。その記念碑的な場所が真駒内公園であり、真駒内屋外競技場なのです。五輪遺産をもっと大事にしてほしいと思っている市民は多いのではないでしょうか。

 清田区と豊平区の町内会連合会など12団体でつくる地下鉄東豊線建設促進期成会連合会は2017年1月、日本ハム球団に「札幌ドーム残留」の要望書を提出しました。これは札幌ドーム周辺地域住民による要望ですが、札幌ドーム残留は札幌全体の問題でもあります。

 北広島案や真駒内案には、前述の通り、さまざま問題・懸念があると思われます。先日のHBCテレビは、札幌の経済界には「札幌ドームに戻ってほしい」という声があると報道していました。

 ベストセラー「里山資本主義」の著者で、日本総合研究所主席研究員の藻谷浩介氏は、北海道新聞「寒風温風」欄(2017年8月20日)に「長期的視点欠く無駄遣い」と題した小論文を寄せ、日本ハムの新球場について「二重投資の典型」と断じ、「札幌市は、ドーム改修を含めた諸施策で球団の残留を図るのが当然」と述べています。

 「なぜ札幌ドームではだめなのか」「札幌市は日本ハム残留のために、もっと大胆に球団の要望を受け入れたらいいではないか」。こういった市民の声を今もよく聞きます。今一度、再検討してもらえないものでしょうか。

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