札幌市議会は2月28日(水)、平成30年第1回定例会の代表質問を行い、改革の堀川素人議員(南区)が日本ハムファイターズの本拠地移転問題について秋元克広市長に質問しました。

 堀川議員は「真駒内公園案には賛成できない」と述べたうえで、「札幌市は最後まで『札幌ドーム残留』を基本スタンスで対応すべきだ」と問いただしました。

 堀川議員と秋元市長のやり取りは次の通りです。

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○堀川素人議員

堀川素人議員

 日本ハムファイターズの本拠地移転問題についてお伺いいたします。

 日本ハムファイターズは平成28年5月24日、「ボールパーク構想」(BP構想)を公表し、その実現を目指しています。

 「ボールパーク」とは、アメリカメジャーリーグの野球場を「ボールパーク」というそうです。プロスポーツは勝ち負けを競い、「さすがプロ」と唸らせるビッグプレーで、見る者を堪能させます。スポーツ好きの私は、プロの技には高い価値があると思っています。

 プロスポーツの世界は全て興行で成り立っています。プロ選手はプロにふさわしい技を披露し、観客はその技を見るために観戦料を支払います。興行主は興行人気を盛り上げ、観客を増し、少しでも利益の多い経営が成り立つように頭を痛めるわけであります。

 いい選手が欲しい、人気のあるチームにしたい、そして優勝したい。この願いはファイターズファンも選手も札幌市も日本ハムファイターズも一致した願いです。

 しかし、ファイターズ球団本拠地の「真駒内公園」案には賛成できかねます。

 球団にとって、真駒内公園案は事業の採算性の面から言ったら、望ましい場所でありましょう。企業がどの場所を本拠地にするか、どの場所で興行するかは、そこであげられる利益が大きなポイントになります。利益、利益と言い過ぎると「利益だけでない。野球には野球なりの理想もある」と言われそうな気もします。

 しかし、札幌市がすべきことは、市民の福利を最優先に球団側に訴え、最後まで「札幌ドーム残留」を申し入れ続けることであります。

 球団の札幌ドーム撤退、北広島市へ転出は最悪のシナリオであると札幌市は考えているようです。しかし、球団が北広島市を候補地と選ぶなら、これは致し方ないことです。本拠地をどこに選ぶかは、球団の責任でなすべきことであります。現在、札幌ドームと球団とは契約関係にあり、その契約を大切にし、残留または新候補地決定の後、誠意をもって対応し合うことが大事です。

 遅きに失した感はありますが、「札幌ドーム残留」が、ここに至っても変わらぬ札幌市の希望であることを球団側に伝えるべきであります。

 球団が真駒内公園を候補地としたとしても、今後さまざまな問題があると思われます。それは、地元に受け入れ反対の声が明確に存在するからであります。この人たちをどのように説得するのでしょうか。

 真駒内地域は、周囲が緑に囲まれ、その中を流れる豊平川にはサケやサクラマスが遡上します。広々とした真駒内公園には札幌冬季オリンピックで使われた屋内スケート場、スピードスケート場、少年野球場等があります。住宅地の中に入ると、閑静な街並みが広がり、住環境としては素晴らしい場所であります。真駒内団地が出来てほぼ50年。木々も大きくなり自然の回復も進み、新たな土地の入手が難しい人気スポットでもあります。

 そんな真駒内の人々を困惑させているのが、札幌市の真駒内公園の新球場建設騒動です。はじめに八紘学園敷地と北海道大学敷地が提案されました。候補地として名指しされた相手先に失礼がないようにするのは当たり前のことです。しかし、実現可能性も十分に考慮したうえで提案すべきです。広い土地があるからといって、どこでも提案すればよいというものではありません。その場しのぎのドタバタはもうたくさんです。

 2つの提案が失敗と見るや真駒内公園の提案です。現時点で、役所間の調整が進んだとしても住民調整は皆無に近い状況です。これでは民主主義社会の原則に反します。

 真駒内公園を含め閑静な住宅地である真駒内に「ボールパーク」なるテーマパークを新たに造る必要があるのでしょうか。ゆくゆくはホテルも建てる、商店街も造る、そして街に賑わいを創り出すとの構想だそうです。閑静が売りの地域に賑わいは必要ありません。何かあれば「賑わいづくり、賑わいづくり」といいますが、商店街はじめ中小零細規模の小売店等に本当に賑わいは来るのでしょうか。

 2月11日のフォーラムに集まった人の意見として「小規模な商店などが潤うことにはならない」という意見がありました。その通りであります。球団が管轄する「ボールパーク」内への出店には高額な出店料が求められ、零細な事業者は排除されるでありましょう。

 北広島市は市をあげての誘致と聞いていますが、未だに決着がついていません。真駒内とは真逆の大歓迎の態勢であるにもかかわらず、北広島で決着していないのはなぜでしょうか。

 北広島市、真駒内公園のどちらが選ばれても、ファイターズ撤退後の札幌ドーム経営の苦境は変わりません。札幌ドームには200億円ほどの借金返済が残っています。日本ハムファイターズ撤退後は、返済という苦境だけではなく「日本ハムボールパーク球場」という最大の経営ライバルに立ち向かっていかなければならないのです。

 ここで質問をいたします。

まず第一に、タイムスケジュールでは、日本ハムファイターズの撤退は2023年、5年後です。球団撤退時の札幌ドームには多額の借金が残ります。その時の借金残高はいくらでしょうか。その返済はいつまで続くのですか。元利合計でお答えください。さらに、球団撤退後の札幌ドームの経営の見通しをお聞かせください。

 第二に、札幌ドームの経営のあり方です。日本ハムファイターズのドーム撤退の一因と言われているのが、札幌市の古い経営感覚です。今の古い経営感覚のあり様では、激しさを増す経済変化に対応できないと思われます。札幌市は自治体であり、経済団体ではありません。市はドーム経営からの撤退を考えておくべきであると考えますが、いかがお考えなのか見解を伺います。

 第三に、日本ハムファイターズが真駒内か北広島に新球場を建設して移転した後、そもそも札幌ドームの経営が成り立つとお考えでしょうか。見解をお伺いいたします。

 第四に、札幌ドーム残留を望み、ファイターズ側に機会あるごとに残留を働きかけてきた秋元市長が、今では真駒内誘致に舵を切ったように思われます。どの時点で、なぜ舵を切ったのか説明願いたいと思います。

 日本ハムファイターズが野球興行主として自前の球場を持つ球団になろうとするのは当然でありましょう。球場、球団一体による経営で基盤を固めたいと考えるのは企業としてごく当然のことであります。「企業の夢はファンの夢」、逆もまた然りであります。この夢はある時点まで一致することは事実です。しかし、同じ夢でも企業の夢は利益と勝利、ファンの夢は勝利と達成感です。

 札幌市は、日本ハム球団との対応で、役所的感覚「上から目線」の対応から容易に抜け出せないまま今日に至ったとの苦情批判が明らかにされています。しかし、だからといって、日本ハム球団が札幌ドーム撤退で突っ走り、真駒内公園で夢を叶えたいと強行するというなら、それは球団自らの力ですればよいことです。

 札幌市としては、最後まで「札幌ドーム残留希望」を基本スタンスに対応すべきであります。札幌市は、あまり焦らず前のめりにならないようにしなければなりません。

 

○秋元克広市長

秋元克広市長

 はじめに、球団撤退時の札幌ドームの市債残高と返済期間についてであります。

 球団が新球場の開業を予定している平成34年度(2013年3月)末における札幌ドーム建設費に係る市債残高は、元金約73億円、利子約26億円、合計で約99億円と見込まれています。その返済は平成44年度まで続く予定であります。

 次に、市はドーム経営から撤退を考えておくべきではないか、つまり民間に経営をゆだねるということについてです。

 札幌ドームは、多目的な利用が可能な公の施設として設置されたもので、今後とも、コンサドーレ札幌のホームスタジアムや様々なコンサート、展示会場としての運用に加え、2019ラグビーワールドカップや東京2020大会等の大規模な国際大会の会場としても活用していく予定であります。

 従いまして、その運営に当たっては、公平、中立な立場での様々な利用調整が必要であることや、球団移転後の抜本的な収益構造の転換に取り組む必要があることを考えますと、今後とも指定管理者制度により、管理・運営していくことが適切であると考えているところであります。

 次に、球団移転後の札幌ドームの経営見通しについてであります。

 ファイターズの移転は、ドーム運営に極めて大きな影響があることから、収益構造の抜本的な転換を図るため、現在、新たなイベント誘致に関するマーケティング調査およびその分析を鋭意行っているところであります。

 現時点において、移転による影響をただちに回復する状況にはございませんが、今後、新たなスポーツイベント等の誘致に向け、より具体的な営業活動を行うと共に、経費削減等を含む経営改革案の検討を深めることで、札幌市の財政への影響を最小限に抑えるよう努めてまいりたいと考えております。

 次に、札幌ドーム残留ではなく、真駒内誘致に舵を切った時期と理由の質問についてです。

 平成28年5月に北海道日本ハムファイターズの新球場建設構想の検討が明らかになりました。札幌市としては、札幌ドームの継続利用を働きかけました。

 平成28年12月には、ファイターズ、コンサドーレ、株式会社札幌ドーム、札幌市の4者で札幌ドームの今後の在り方を協議する場を設けました。その協議の中で、札幌ドームを野球専用球場にすることを含めた議論を行いましたが、球団代表から「札幌ドームでの野球専用化は望んでいない」という発言を受けまして、札幌ドームは多目的施設として今後も継続することになりました。

 その直後、ファイターズと日本ハム本社が新球場建設のタスクフォースを設置したことから、札幌ドームの継続利用は非常に困難と判断したところであります。

 また、このまま札幌ドームの継続利用にこだわるなら、球団の市外への移転も懸念されますことから、球場に足を運ぶ交通利便性を考え、札幌市内に2つの候補地を提案しました。しかし、その後の協議の中でいずれも難しい状況にあるところであります。

 そんな中、球団から真駒内公園が話題にのぼりましたことから、引き続き市内に本拠地を置いてほしいという思いから、北海道と調整したうえで、昨年12月に真駒内公園における新球場の検討を進めていくことに至ったものであります。

(再質問がありましたが、その質疑は省略します)

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